制度の主人公は国民、担い手としての自覚を--『介護保険の意味論』を書いた堤 修三氏(大阪大学大学院教授)に聞く

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 残念なのは、そうした財政試算を正面から受け止めて、制度のあるべき姿を議論する責務のある審議会の委員がそれを避けたことだ。「介護職員の処遇改善や利用限度額の引き上げは必要だ。しかし保険料や利用者負担増はすべきでない。代わりに国庫負担を引き上げろ」との主張が続出するありさまを見るとがっかりする。現在の5割を超えて公費を投入することの問題点や実現性のなさを棚に上げて、財源が天から降ってくることに期待するというのは無責任だ。制度発足時の理念だった「みんなで支える介護保険」はこんなものではなかったはずだと思う。

「私(国民)=要求する人」「あなた(国)=制度を作る人」という対立的二分法では、制度の安定や機能の発揮は難しい。国民にはその二分法を乗り越えて制度作りの主人公になってもらいたい。

(聞き手:岡田広行 =週刊東洋経済2011年1月15日号)

つつみ・しゅうぞう
大阪大学大学院人間科学研究科教授。1948年長崎市生まれ。東京大学法学部卒業後、旧厚生省入省。98年大臣官房審議官(介護保険制度実施推進本部事務局長)に就任、介護保険制度の創設実施の事務を担当。厚生労働省老健局長などを経て、2003年8月に同省を退職。同年11月より現職。

『介護保険の意味論』 中央法規出版 2100円 158ページ

  

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