制度の主人公は国民、担い手としての自覚を--『介護保険の意味論』を書いた堤 修三氏(大阪大学大学院教授)に聞く


--その一方で、特別養護老人ホームの多床室(相部屋)容認論については、自治体の姿勢を厳しく批判しています。

要介護高齢者が最期までの長い生活を過ごす場はプライバシーの確保された個室であるべきというのは、現在の世の中では当たり前の考え方だ。排せつの世話まで他人と同じ部屋でされたい人がいるだろうか。にもかかわらず、「地方分権」「地域主権」という錦の御旗を持ち出して多床室を作らせろという一部自治体の姿勢は、憲法第13条(個人の幸福追求権)や第25条(生存権)などの基本的人権の尊重と相いれないという点でも極めて危険だ。

残念なことに、10年3月に政府から提出された「地域主権推進一括法案」(継続審議)では、介護施設(グループホームを含む)の居室定員は自治体の判断で決められる「参酌すべき基準」とすることを認めてしまった。本来、ケアの本質にかかわる内容については全国均一であるべきなのに徹底されていない。

--10年末にかけ、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では、12年の介護保険制度改革のための議論が行われました。しかし、11月30日にまとめられた意見書では、字句の羅列や両論併記が目立ちました。

評価できる点もある。必要な給付費と財源(国庫負担・保険料)に関する具体的な内容を盛り込んだ財政のフレームワークを示したことだ。制度改革のメニューとして利用者の自己負担引き上げなどが示されたことで批判が続出したが、仮にそのような施策を実施したとしても財政上の効果は少ないことも判明した。その一方で、12年度時点では、財政安定化基金や介護給付費準備基金の取り崩しで65歳以上の高齢者が納める1号保険料は月5000円以下にとどめることができるとの試算結果が出された。

厚労省の本音は、「市町村や利用者が保険料5000円が限界だというのであれば、やり繰りでその範囲に抑えるけれど、それは今回限りですよ」というもの。「次回の引き上げは覚悟しておいてください」ということだろう。

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