制度の主人公は国民、担い手としての自覚を--『介護保険の意味論』を書いた堤 修三氏(大阪大学大学院教授)に聞く


 「要介護リスク」とは何か、「要介護状態」とはどのような特性を持つのか。要介護状態には不可逆性があるのではないか。介護サービスを保険制度によって提供することの意味や留意点は何か。40歳時から保険料を徴収することの意味は何か、といったことを、一つひとつ説き明かしていった。最近、要介護認定制度の廃止論が一部で持ち上がっているが、なぜ介護保険発足に際して同制度を導入したのかについてもできるかぎり詳しく述べた。

──制度が複雑化していったことについて、堤さんはとりわけ厳しく批判しています。

特に2005年の法改正や累次の介護報酬の改定の結果、制度が著しく複雑化してしまい、一般市民にはとても理解できないものになってしまった。給付費抑制の名目に使われた介護予防という考え方がその代表例だ。新しい「予防給付」を創設する一方、要介護認定で非該当とされた高齢者の一部(特定高齢者)を対象に介護予防事業も始まった。ケアマネジメントでも「介護予防ケアマネジメント」が導入された。こうしたことにより、法律の条文がいたずらに増え、たくさんのマニュアルやガイドラインが作られた。介護報酬でも各種の加算減算措置が多用された。解説本はいつの間にか辞書と同じくらいの厚さになってしまった。

──介護保険制度は創設時に「地方分権の試金石」ともいわれました。その理念は実現しましたか。

最近の制度改革を見ると、国は自治体を縛りすぎているのではないかと感じる。その一つの例が介護サービスの情報公表制度だ。制度の余白を残し、自治体が地域の実情に応じて事業運営に工夫を凝らすべきなのに、国は余白を塗り潰してしまった。その結果、保険者である市町村から考える機会を摘み取ってしまった。

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