トルコでのスタバ騒動をどう見るか?
ケネディ:私たちのプログラムではいろいろな国に行きます。トルコでは、「アラブの春」が起きたときのことをケーススタディとして取り上げました。あのときトルコ政府は、催涙ガスを流してデモを鎮圧しました。
桑島:トルコは民主主義のはずなのに、独裁的な対応で問題になりましたね。
ケネディ:そのときホテルは催涙ガスから逃げてきた人たちを受け入れたのに、スターバックスは扉を閉めて拒否した。その後、トルコ全体でスターバックスへの否定的な意見が広がりました。
桑島:スターバックスは自由や民主主義を標榜するアメリカの会社なのに、シャットダウンするとはどういうことだ、という論調ですね。
ケネディ:企業ブランドに傷がついたわけです。でもスターバックスはフランチャイズビジネスであってすべてが直営店ではないから、フランチャイズ店がそういう対応をしても、アメリカ本社は別の考えだった可能性もあります。もし自分がグローバルな経営者だったとしたら、中東などで政治紛争が起きたとき、企業ブランドに影響を与えるような事象につながると予測できたでしょうか。
トルコの別の例で言うと、トルコ政府が子供たちに対して、学校にフリト・レイというアメリカの有名なポテトチップスを持ってきてはいけないけれど、トルコのものはいいという通知を出したことがあります。
日本企業は米国政府や世論との付き合い方が下手!
桑島:そういうリアルなケーススタディを生徒たちに投げて、考えさせるわけですね。ところでケネディ教授から見て、日本の政府や企業の、アメリカ政府との付き合い方はどのように見えますか。
ケネディ:日本の政府や企業は、アメリカの政府や世論とのコミュニケーションがあまりうまくいっていません。自分のメッセージをうまく伝えることができていない。その理由は2つあります。
ひとつは言語の問題。日本人はあまり直截的にものを言いません。たとえば建前はこうだけれど本音は違う、というようなことがある。私がアクセンチュアにいたとき、日本人のクライアントが「あとでまたミーティングしましょう」と言ってきたことがあって、私はうれしかった。ところが私の部下の日本人が、「あれは建前でそう言っているだけです」と言う。そういうふうに直截的にものを言わない文化があります。
これが中国人や韓国人なら、「またミーティングしたい」と言ったら言葉通りに受け止めていい。しかし日本語はダイレクトにものを伝える言語ではないので、それがワシントンなど政治の街においてはディスアドバンテージ(不利)になる。本音とタテマエを使い分けるのは、アメリカ人からするとウソをついているように感じられてしまいます。本音と建前という概念はアメリカ社会にはないので、もっとダイレクトにものを言うべきです。
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