トマ・ピケティ「21世紀の資本」が指摘したこと なぜ1%への富の集中が加速するのか

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東京財団ではトマ・ピケティの「資本論」を読む研究会を開催している。11月13日に行われた第1回会合で岩井克人・東京財団名誉研究員(写真右)がプレゼンテーションを行った。その模様を2回に分けて掲載し、その後のディスカッションの模様についても掲載していく。

研究会の構成メンバーは以下のとおり。
秋山 昌廣 東京財団理事長
岩井 克人 東京財団名誉研究員(資本主義、企業社会)主査
加藤 創太 東京財団上席研究員(政治経済)副査
神林 龍 東京財団研究員・一橋大学経済研究所准教授(労働経済)
小林 慶一郎 東京財団上席研究員(成長)
清水 剛 東京財団研究員・東京大学総合文化研究科准教授(経営)
中原 裕彦 経済産業省産業組織課長
村松 幹二 東京財団研究員・駒澤大学経済学部准教授(法と経済)
山形 浩生 評論家、翻訳家(資本論翻訳担当)、野村総研研究員
「トマ・ピケティの『資本論』を読む研究会」概要はこちら(東京財団ウェブサイトへ)

 今後、数十年議論の対象になる重要な本

「資本論」全体の問題提起を行うというのが、私に割り当てられた分担だったが、実際には、このプレゼンテーションを準備する中で、自分で問題提起し、それに対する自分なりの考え方にまで触れることになった。

ピケティは「新しい資本論」を書こうとした。この本はすでに全世界的に話題になっているが、おそらく、今後、数十年議論の対象になる重要な本だ。

私は2000年頃からピケティの研究には注目し、特に所得分配の問題に注目しながら論文をいくつも読んできたし、講義でも解説などをしてきた。自分の今までの研究と似ている部分も異なる部分も、違和感を覚える部分もあるため、この研究会ではそういった点を突き詰めていければ、と考えている。

「資本論」のベースになっているのは、ピケティを中心とするいくつかの共同研究だ。エマニュエル・サエズというフランス人のほか、アンソニー・アトキンソンというイギリス人研究者が所得分配分野の大御所であり、これらの研究者がWorld Top Income Database (WTID)という優れたデータベースを提供している。  

 ピケティの研究の出発点は、このWTIDにおいて、米国でトップ1%所得者の所得割合が最近になり急速に上がったことを示した点に着目したことにある。

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