トマ・ピケティ「21世紀の資本」が指摘したこと なぜ1%への富の集中が加速するのか

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所得格差の推移(先進国の国際比較)

では、1980年代から進んだ不平等化の要因はどこにあるのか。これまでに、技術進化の視点、労働経済学の視点など、以下のように6つほどの視点から仮説が提起されてきた。

そのひとつが「グローバル化」である。先進国の、特に非熟練同労働者層は、途上国の非熟練低賃金労働者と競争することになり、先進国の低所得者層の賃金が抑えられる。その結果、不平等が広がる。これは一時期否定されたが、最近また復活している仮説だ。

そして最近、最もよく使われる説明が、2つ目の「技術進歩」だ。熟練労働が求められる方向に技術進歩が進み、非熟練労働に対する需要が低下し、非熟練労働者の賃金が上がらず、不平等化が進むという考え方である。

第3が、IT化である。これは、技術進歩と似た視点の考え方だ。熟練労働者へのシフトが進んでも、従来はホワイトカラーは大丈夫だと考えられてきたが、IT革命によりホワイトカラーの仕事も代替されるようになってきた。これにより中間層が消滅しつつある。

第4が、労働組合の弱体化。政治の保守化による労働組合の弱体化と政治的影響力の減少が不平等を招いているという考え方だ。5点目が、実質最低賃金の低下。ピケティは、フランスの実質最低賃金が1980年代に比べてだいぶ下がっていることを指摘。他国でも最低賃金は上がっていない。

そして6点目の視点が、高齢化の進展だ。これは日本特有かもしれないが、橘木・大竹論争で阪大の大竹文雄さんが唱えた、「日本の不平等化の大半は高齢化で説明できる」という考え方がある。日本の経済学者の間ではコンセンサスに近い。英米以外の国の所得の不平等化の問題も、実はこの高齢化で説明できる部分があるかもしれない。

ではピケティは、何を発見したのだろうか。米国だけでなくほかの多くの国でも、戦前はトップ1%が所得の20%を占める不平等国家だったこと、大恐慌、2度の世界大戦を通じた平等化の進展(大恐慌に対する手厚い社会保障政策、戦争で戦う若い兵士に対する分配などが要因)が共通して見られることを指摘した。

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