島耕作とほぼ日のコラボはこうして生まれた 学生編と手帳はファン垂涎の組み合わせだ

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平野 「最初の奥さん岩田玲子と出会うESSにはどう入ったのか?」なんて経緯もわかりますね。

常見 そうなのですよ。物語に奥行きができて、深みが増しています。そして、入門編としても最適です。ここから、読んどけ、と。それこそ、今の若者が『スター・ウォーズ』を公開順ではなく、エピソード1から観るように(笑)。

岩崎 そうなのです。ここから読めばいいんだと、わかりやすくなったと思います。

「糸井重里のほぼ日」から「ほぼ日手帳のほぼ日」へ

常見 ほぼ日手帳の話にいきましょう。ここで正直お伝えしないといけないのですが、これまで「ほぼ日手帳」に手を出せずにいたのです。

というのもほぼ日手帳、そして糸井重里さんには熱心な「信者」の方がいらっしゃるので、「ミーハーな気持ちで、クリエイティブでもない人は使ってはダメかな?」というように思っていました。ここで使っちゃ負けだ、くらいに思っていました。

もちろんこの機会に手に取って、「もったいないことをしていた!」と気がつきましたが、実際どんな方が使われているのですか。

ほぼ日刊イトイ新聞・棟廣祐一(以下、棟廣) なるほど。確かに初めてほぼ日手帳が発売された2001年は、糸井に憧れた広告業界の方や熱心なほぼ日刊イトイ新聞の読者を中心に使われていたと思います。

東京糸井重里事務所 棟廣祐一氏

しかし最近は「ほぼ日手帳」経由で糸井重里や「ほぼ日刊イトイ新聞」を知るという方が出てきているぐらい、ほぼ日手帳が「ひとり歩き」しています。ユーザーは30代後半から40代前半が多く、公式のネットショップで買う方の7割は女性という状況です。

常見 「ほぼ日手帳のほぼ日」という認識が広がっているのですね。ほぼ日手帳を中心にデジタルの時代に「アナログ手帳の復活」と言われていますが、売り上げはいかがですか。

棟廣 発売当初の2002年版は1万2000部でしたが、おかげさまで2014年版は50万部を達成しました。

常見 すごい伸び率ですね。何かターニングポイントはありましたか。

棟廣 2005年版がLOFTの店頭で取り扱われたことが大きな転機となりました。そしてLOFTの手帳での売上がナンバーワンになったことで、メディアに取り上げられ、さらに多くの方に知っていただけたようです。

常見 店頭で「実際に手に取る」ことで、ほぼ日手帳の魅力が伝わったのが大きな要因かもしれませんね。ほぼ日手帳の作り手として、どこが支持されている要因だと分析されていますか。

冨田 ユーザーの方には「スケジュール管理に便利」というよりは、「手帳に書くことが楽しい」という点を支持していただいていると思います。デジタルなものは、見返す機会があまりないのですが、手帳に書いたものは「見返したくなる」のです。

例えば、そこには美味しかったレストランのカードが挟んであったり、ちょっとした殴り書きも読み返すとそのときの状況が思い出せたりする。「日付がついた思い出ノート」かもしれません。

常見 それは日本人になじみ深い「日記」とは違うのですか。

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常見陽平は「ほぼ日手帳」をこのように使っている

冨田 日記文化と地続きではあると思うのですが、ちょっと違うのは「ほぼ日手帳」は他人に「見せても大丈夫」というところです。

「秘め事」と「公」の間にある存在で、「ここはダメだけど、ここはいいよ」と見せてもらえるのが「ほぼ日手帳」の不思議なところです。

私たちは「作り手」ではあるのですが、完成させるのは手帳の持ち主一人一人です。もし学生の島耕作がほぼ日手帳を一年使ったらと思うと想像が膨らみますね。

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