島耕作とほぼ日のコラボはこうして生まれた 学生編と手帳はファン垂涎の組み合わせだ

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杉田 弘兼先生ははっきりと「島は決して女たらしではない」とおっしゃっていますね。

常見 そうなんです。彼からは一度も不倫を誘ったことがないこともわかります。そして部長編は、「団塊世代の悲哀」がテーマの一つ。関連会社出向など、大学時代の同期たちが冷や飯を食わされている様子も描かれています。『部長 島耕作』と言いつつ、ほとんどは関連会社出向のエピソードです。

余談ですが、書店に部長編を探しにいった時に、書店員さんに「『部長 島耕作』の最新刊はありますか?」と尋ねたら「あっ、島耕作さん、部長になられたのですか?」と言う返答が・・・。

一同 (笑)。

常見 もっとも取締役編、常務編あたりから、雲の上の人になったなという感じもしました。等身大ではない、というか。漫画版『週刊東洋経済』みたいな感じですね。私、最初にリクルートという会社に入ったのですが、いまでは同期が事業会社の社長や、部長、編集長になっていって、自分は出世も出来ず、取り残された感があるわけですよ。それに近い感情を抱きました。小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』並みに文字数、多すぎでしたし。中国の闇社会に迫っていた頃などは「若干迷走しているのでは?」と思っていました。

東京糸井重里事務所 平野慎也氏

ほぼ日刊イトイ新聞・平野慎也(以下、平野) 確かに就職活動の時期に「経済漫画」として読んでいる友人もいました。

常見 なるほど。そういう読み方ができる「ビジネスの王道」がちゃんと描かれています。あれ、あなたですか?自動車の教習所で島耕作に出会ったというのは?

平野 はい!弘兼先生と糸井重里の対談をお読みになったのですね?

常見 もちろん、読んでますよ!ビジネス雑誌では叩かれそうで書けない実状やオピニオンを書かれることで、島耕作の作品としての強度が増しているとも思います。

そして『イブニング』でスタートしたヤング編は、「サラリーマンの醍醐味」が見事に凝縮されている良シリーズだと思います。若手社会人ならではの戸惑いですとか。等身大の本であり、自分たちのためにあるという感じがしました。

『学生 島耕作』はなぜこんなに面白いのか

杉田 本当に読み込んでいただいて、感謝です。そしてお伺いしたいのが、島耕作の大ファンの常見さんから見て、今回の『学生 島耕作』はいかがですか。

常見 これは長年のファンとしての嗅覚なのですが、弘兼先生は『学生 島耕作』をすごくワクワクして書かれていませんか?

杉田 その通りです。やはり伝わりますか。

常見 ですよね!ビシビシ伝わってきますね。「楽しく書いていること」が漏れ伝わってくるので、古くからのファンとしても心地よく読むことができます。ほとばしっていますよ、情熱が。面白くて何度も読み返しました。内容は、「青春らしい青春漫画」であることが魅力的なシリーズだと思います。第2巻が待ち遠しいです!

岩崎 ありがとうございます。「若者が元気だった時代」の「弘兼先生の思い出」が核になっているからこそかもしれません。

常見 エンターテインメントとしてもちろん素晴らしいですが、一方で若者の「当事者視点」から見た当時の社会を、読むことで追体験できる貴重な作品でもあるとも思います。学生運動も取り上げられています。

これに代表される若者と政治の関係は、これまでのヤング編でも描かれていましたが、よく「昔の若者は学生運動に没頭した」「政治に強い関心があった」なんて言い出す人がいるわけですが、それが必ずしも正しくないことが、この作品からはわかります。

やっぱり「モテたい」願望は変わらないんだ、とか。興味深いですね。これは新たに若い読者に是非とも読んでもらいたいですね。こういう青春もあったんだ、と。また元々の読者には、お馴染みのキャラクターの若き日の姿が見れて、たまりません!

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