島耕作とほぼ日のコラボはこうして生まれた 学生編と手帳はファン垂涎の組み合わせだ

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常見 ほぼ日手帳さんとしては「島耕作とのコラボ」の提案を、どう受け取られましたか?

東京糸井重里事務所・冨田裕乃(以下、冨田) 大変光栄でしたし、きっと喜ばれるコラボレーションになると思いました。

東京糸井重里事務所 冨田裕乃氏

これまでも「物語の中で、もしキャラクターがほぼ日手帳を使っていたら?」という設定で、講談社さんとは西尾維新さんの物語シリーズや『宇宙兄弟』(小山宙哉著)とのコラボをしてきました。実際の手帳という形の「モノとしてのコラボ」は今回が初めてです。

『学生 島耕作』は大学時代の話で、大学生といえば「初めて手帳を持ち始める時期」ということもあって、「是非お願いします!」ということになりました。

手帳は、製作に意外と時間のかかるものですが、できるかぎり学生 島耕作らしさを出せるように、講談社さんと相談させていただきました。

常見 そうだったのですね。完成した手帳、素敵です。これはクールだな、と。学生っぽい、しかも早稲田大学っぽい表紙がワクワクしますし。弘兼憲史先生が書きおろした、オプションの下敷きもたまりません。島耕作の世界観をわかっていらっしゃると思いました。そして今回のコラボは、島耕作ファンとしては特別嬉しかったです。

岩崎 ありがとうございます。

『島耕作』の絶大な知名度と広がる誤解

常見 ただ、熱狂的なファンとして、講談社さんには物申したいこともあるのです。これまでファンとして、ブログなどでも苦言を呈してきたのでお読みになっているかもしれませんが・・・。

最近、講談社は島耕作を安売りしていないか、と思う瞬間は正直ありました。例えば、社会学者古市憲寿氏との対談という設定の特別企画も、何かこう不完全燃焼感があったというか。島耕作が話したという設定のコメントに、魂と愛を感じなかったのです。それ以上に、『会長 島耕作』の第1巻の特別版についていた「人生ゲーム」とのコラボは率直にがっかりしました。「島耕作ってそういうものなのか?」と思ったのです。世界観をちゃんと描ききれていないというか。

一方、この件もそうですが、世間は島耕作を誤解しているのですよ。これは、声を大にして言いたいのですが、世の中の多くの人は、島耕作をちゃんと読んでいない。島耕作は不倫漫画ではありません。彼は仕事をしているんです!(声がだんだん大きくなる)

一同 (笑)。

常見 特に、ビジネスシーンの面白さは、部長編がたまりませんでした。左遷など苦労もしていますしね。ずっと成功・出世・情愛というわけではありません。島耕作の各シリーズ最終回は出世シーンなのですが、社長編の最終回というのは、晴れて会長というわけではなかったので。会社と社会の厳しさを感じるものになっていました。

イブニング編集部・杉田光啓(以下、杉田) そうなんです。島耕作はもう「芸能人」みたいな存在で、一度ついたイメージはなかなか払しょくされないですね。

講談社 イブニング編集部 杉田光啓副編集長

「島耕作シリーズ」はおかげ様で大変「知名度」のあるマンガなのですが、一方で「実際に読んだことのある人はどれくらいいるのか」という問題を抱えています。今回のコラボもほぼ日さんのお力を借りて、「まだ読んだことのない方」へアプローチしたいという思いがありました。

常見 「知名度の高いコンテンツは読まれていない問題」ですね。例えば『機動戦士ガンダム』も「アムロ行きまーす!」のような名セリフや「シャアの赤いザクは3倍の速さ」みたいな雑学は知られているけど、実際のアニメを見たことのある人は少ないでしょう。この雑学も、何度も再放送され、『アメトーーク!』などのバラエティ番組でいじられ、定着してきたものです。

島耕作はちゃんと読むと本当に奥の深い作品で、シリーズによって作風が異なるのも島耕作の魅力のひとつだと思います。

成功・出世・情愛のお伽話と揶揄されることもありますが、日本企業の姿の一面を捉えていると思いますし。現実の世界をかなり取材して捉えているな、と。不倫漫画と揶揄されるのは、課長編に対する誤解ですね。まあ、サラリーマン時代の職場には「俺は島耕作だ」とか言って不倫しまくっている上司とかいましたが(苦笑)。

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