「逆オイルショック」で原油は4年ぶり安値 サウジが価格調整役を放棄し、下落加速へ
OPECの盟主サウジアラビアが減産に踏み切らないことも下落の大きな理由だ。
サウジは日量1150万バレルを生産する世界最大の産油国であると同時に、原油価格を維持するスイングプロデューサー(調整弁)の役割を担う。日量100万~200万バレルの余剰生産能力を生かし、需給が緩んだときは減産し、逼迫すると増産に動くことで、産油国の利幅を確保する調整役を果たしてきた。
そのサウジが原油安に振れた夏以降も、高水準の生産を続けている。OPEC総会では、ベネズエラなど減産を主張する国を押し切り、減産を見送る意思を明確に示した。サウジがスイングプロデューサーの役割を放棄するのは、原油放出で旧ソ連を崩壊に導いた1980年代などに限られる。
シェールオイルの損益分岐点は1バレル50~80ドル
背景にあるのは、米国のシェール革命だ。EIA(米エネルギー省情報局)によれば、米国のシェールオイル総生産量は14年に日量400万バレルを超え、米国の石油総生産量の半分近くを占める。15年にはサウジとロシアを抜き、世界最大の産油国になる見通しだ。「米国産シェールの大幅増産が続く中、サウジ一国が減産しても従来のように需給の引き締め効果が出ず、ただシェアを落とすことになりかねない」(井上氏)。
原油安は米国産シェールの生産を停滞させるまで続くと見る向きも強い。「シェールオイル採掘の損益分岐点は1バレル=50~80ドルと幅があるが、地層が複雑で生産コストが高い井戸は70~80ドルと、足元の原油価格に対し採算割れしている」(日本総合研究所理事の藤井英彦氏)。
右肩上がりの続いていた稼働リグ数が11月に入って減少に転じるなど、すでに米国のシェール開発には一部で原油安の影響が出始めた。原油価格の決定権をめぐり、米国とOPECが熾烈な争いを繰り広げている。
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