君、國を捨つるなかれ 渡辺利夫著
明治から平成まで、主役こそ代われどパワーポリティクスの交錯する東アジアは難しい地域である。だからこそ「坂の上の雲の時代」から今の日本が学ぶことは少なくない。大陸を舞台に列強と同盟し対峙した歴史に学ぶ中で、東アジアという特殊な地域では厳しく現実を直視すべきことが力説される。異質の日中韓がEUのようなポストモダンを追求するのは夢物語であるとし、地政学的アプローチの重要性が強調される。
史実と最近の事情がたっぷり盛り込まれて教えられるところが多い。満鉄総裁となった後藤新平が、「満州における文明の出会いのあり方は争闘によらず…親交による」べきだとした一節も台湾の成果を思えば軽々に読み過ごせない。東アジア共同体の幻想を捨てよ、日本は海洋国家とのみ連携せよ、という著者の持論は傾聴すべきものがあり、議論が発展して日本外交に寄与することが期待される。松本健一・関川夏央氏らとの対談も示唆に富む。(純)
海竜社 1600円
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