歪んだ権威 日本医師会 積怨と権力闘争の舞台裏 辰濃哲郎&医薬経済編集部著 ~国民の視点で描ききった迫真のルポルタージュ

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歪んだ権威 日本医師会 積怨と権力闘争の舞台裏 辰濃哲郎&医薬経済編集部著 ~国民の視点で描ききった迫真のルポルタージュ

評者 二木 立 日本福祉大学教授・副学長

 「歪んだ権威」という書名は、よくある「告発もの」を連想させる。しかし、中身は膨大で綿密な取材に基づいて、1990年代以降2010年4月の原中勝征現会長誕生に至る20年間の日本医師会の「権力闘争の舞台裏」を描ききった迫真のルポルタージュである。

しかも、多くの「内幕もの」と異なり、ニュースソースをほとんど実名で示し、しかもそれらの信頼度についても逐一明記していることが、本書の価値を高めている。冒頭に、長編推理小説のように主要登場人物31人の簡潔な「人物紹介」を付けているのは新趣向で、入り組んだ記述の理解を助ける。

本書の基本的視点は「医師の利益が、国民や患者の利益と一致しないところに悲劇がある」であり、歴代会長や幹部への評価は概して厳しい。

しかし、「国民の視点を持ち続け」小泉政権と正面から対峙した植松治雄元会長への眼差しは例外的に温かい。09年総選挙前からいち早く自民党政権を批判した原中勝征現会長も肯定的に描かれる。逆に、唐澤祥人前会長が小泉政権に迎合して、06年会長選挙への「政治介入」を招いたことには厳しい。本書の評価は概ね妥当だと思う。

しかし、不満も二つある。一つは、「権力闘争の舞台裏」に焦点が当てられた結果、特に植松会長時代以降の日本医師会と地方医師会の自己改革の努力と実績を無視していることである。たとえば、原中会長が茨城県医師会会長時代に導入した「医療問題中立処理委員会」(医療の裁判外紛争解決)である。

もう一つは、最近の医療政策では日本医師会の影響力が低下し、病院団体の役割が大きくなっているにもかかわらず、それについての記述がないことである。次著ではこれらについての掘り下げを期待したい。

たつの・てつろう
ノンフィクション作家。1957年生まれ。慶応義塾大学法学部を卒業後、朝日新聞社に入社。支局、大阪本社社会部を経て、東京本社社会部。旧厚生省を担当し、遊軍キャップ、デスクなどを務める。2004年退社。医療問題のほかメディア論や高校野球取材も手掛ける。

医薬経済社 1890円 421ページ

  

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