千田:かつて英検がピークのときは、トップの英検をTOEICが追い越すことになるなんて誰も考えなかった。でも、実際にそうなった。歴史は繰り返されると言いますが、仮にTOEICがトップから脱落するとすれば、何がきっかけになると思いますか?
安河内:間違いなく、今、巻き起こっている4技能化の波に乗り遅れることでしょう。大学入試も4技能化になる流れができましたし、世界的に見ても4技能均等のテストが主流となっています。このトレンドを変えることはもう誰にもできません。
技能均等スコア化の流れに乗り遅れてしまうと、かつて英検が合否という判定スタイルから抜けきれず、スコア化したTOEICに受験者がどっと流れ込んだのと同じ現象が起こると思います。今度はTOEICから4技能均等スコア化をいち早く実現させたテストに、人が流れていくでしょう。
ちなみに英検は、世界共通指標に合わせた、4技能スコア化に向けての土台作りをすでに始めています。この土台には、国際基準に基づいたCSE(Common Scale for English)という4000点満点のものが使用される予定です。4技能をそれぞれ1000点ずつの数値に割り付ける形で、4技能均等スコア型のテストの設計が行われていく予定だそうです。
このように各試験機関が4技能均等スコア化に動いている中でTOEICが乗り遅れると、試験業界でも大逆転劇が起こるでしょう。
TOEICは社会人の4技能テストの窓口に!
千田:先日、TOEIC関係者のみなさんと大学入試の話をしたときに、「4技能がブームですけどどう思いますか?」と聞かれたのです。大学入試についての話だったので、私は、「TOEICは開発の原点に戻り、実社会という出口でどっしり構えているべき。大学入試にTOEICという方向にはいかないほうがいい」という意見を述べたのです。
安河内:同感です。実社会の仕事の場面を想定したTOEICが大学入試に入ってくる必要はまったくないですね。それよりも今後、大学入試の4技能で上がってきた若者たちが、社会に出て2技能しかないと困るので、4技能を用意しておいてくれればいいのです。大学入試4技能化のウォッシュバック効果で、中学、高校の英語も4技能化が進むのに、実社会に出てからは2技能ではダメですから。
千田:ただし、日本の企業で必死に4技能の必要性を訴えているところが少ないのが現状です。
安河内:遅れていますね。TOEICを導入するところまでは一気に進みましたが、まだ企業の経営陣がTOEICテストのLRだけで、4技能すべての実力を測れると勘違いるふしがあります。
千田:TOEICが普及しているときも、「やっぱり英検」と言ってずっと動かない企業がありました。同じように4技能と聞いても「TOEICがあるからいいだろう」と、重たい腰を上げないような状態と言えるかもしれません。ちょうど“端境期”なのだと思います。
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