こんにゃくを世界に売り込んだ驚異の発想 明治生まれの伝統に革新を加えた職人の気概
ユネスコの無形文化遺産に登録されている「和食」。海外では日本食レストランが2013年に約5万5000店と過去5年でほぼ倍増しているほか、日本の農林水産物の輸出額は年間約5000億円に上る(農林水産省調べ)。
おいしくて安全な日本の食品はいまや一つのブランドイメージとして定着し、工夫次第では世界で勝負できる。福岡県大牟田市に住む石橋渉さんもそんな気概を持つひとり。11月22日にTBSテレビで放送された「ジョブチューン」に出演した石橋さんは、明治10年(1877年)から続く老舗こんにゃくメーカー、石橋屋の経営者としてその食文化を世界に広めている。こんにゃく一筋37年の職人だ。
「悪魔の舌」と嫌われたが…
こんにゃくは平安時代に中国から日本に伝わった。今ではおでんや煮物の和食には欠かせない食材だが、アジア地域を除けば、世界でこんにゃくを食べる文化はほとんどない。
にもかかわらず、石橋屋は世界に打って出た。初めて海外へ輸出を始めたのはシンガポール。2002年のことだ。その後、輸出先を増やし今では欧米を含めて世界20カ国以上にこんにゃくを輸出するまでになったが、その道のりは平坦ではなかった。
「これはデビルズタン(悪魔の舌)だ」
石橋さんが10年以上前にニューヨークのレストランを営業で回った時によく言われた言葉だ。欧米向きではない食感や見た目。欧米は、日本の商品をそのまま持っていって「美味しい」と受け入れられるような市場ではなく、当初の反応はよくなかった。