1本1000円のみかんジュースを売りまくる男 年商を2倍に引き上げた、みかん農家のこだわり

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和歌山県有田市で伊藤農園を経営する伊藤彰浩さん

平均年齢66.2歳、耕作放棄地は滋賀県の面積ほどに及ぶ──。ニッポンの農業が置かれた現状は厳しい。一方で、政府は医療や介護などと並び、農業を成長分野の一つに位置づけている。農地の規模拡大や生産から加工、販売まで手掛ける6次産業化の推進などにより、農業所得を10年後に倍増させる青写真を描く。最近では「農コン」「ノギャルプロジェクト」など、若者の参画も注目されてきた。

そんな環境下で志を持ち、ビジネスモデルを工夫すれば農家でも高成長は可能だ。みかん農家の伊藤彰浩さんもそのうちのひとりである。11月8日(土)にTBSテレビで放送された「ジョブチューン〜超一流農家スペシャル〜」に出演した伊藤さんは、自身が経営する伊藤農園(和歌山県有田市)の年商を2億円から4億5000万円へと、なんと2倍以上に引き上げた実績を持つ。

「育てて卸すだけ」の農家はもう古い

ビジネスモデルはユニークだ。伊藤農園の売り上げの約8割は、みずからが生産する「みかんしぼり」。果汁100%のみかんジュースだ。伊藤農園はみかん農家だが、飲料メーカーの顔も持つ。価格はたとえば750ミリリットルの5本入りで5554円(税込)と1本当たり1000円を超える高級品である。

伊藤農園が自社HPなどで販売する「みかんしぼり」

農家と聞けば、農作物を育てて農協に卸売りするというビジネスモデルが思い浮かぶかもしれないが、伊藤農園はそれとは違う。生産、加工、販売のすべてを自社でコントロールする点に特徴がある。

顧客からの注文は自社が運営する通販サイトで直接注文を受け、そのまま直送。新鮮なみかんを消費者の手元に届ける。加工品のジュースについても、「どう料理したらおいしくなるか」を理解している生産者が自ら加工を行うから消費者に愛される製品が生まれる。

みかんしぼりは、手間ひまをかけ、おいしさを最大限に引き出す製法でつくられる。「みかん農家にしかできない」という高い評価を受け、高品質な食品や飲料に贈られるモンドセレクションの金賞を6年連続で受賞している。

こだわり抜いた製法のポイントは「和歌山県産みかんしか使用しない」「添加物を使わない」「実の部分だけを使った贅沢な搾り果汁を使う」の3つである。

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