1本1000円のみかんジュースを売りまくる男 年商を2倍に引き上げた、みかん農家のこだわり
一般的なみかんジュースは、みかんを皮ごと搾ってつくるのが当たり前だが、皮には渋みも多く含まれる。対して、みかんしぼりは、みかんの実の部分だけを使ってジュースにする。
しかも、みかんしぼりをつくるときには、通常のみかんジュースの半分ぐらいしか、実を絞らない。それ以上搾ると苦みが出てしまうからだ。つまり、徹底的に苦みを取り去った、みかん果汁の味なのである。
みかんの栽培方法も徹底している。もともと、和歌山県は紀州の温暖な気候と黒潮から吹く潮風に恵まれ、みかんの生産量は日本一。その中でも、古くからみかん栽培が行われていた有田のみかんは、甘くて美味しいみかんとして有名だが、伊藤農園はみかんの栽培に使う農薬の使用量を通常の半分以下に抑えている。
しかも有機肥料のみを使い、除草剤も使わないため、収穫期以外でも虫が付かないように草刈りをするなど、可能な限り人の手で作業をする。年末の忙しい時期は、朝から夜12時まで作業をする日もあるのだという。
伊藤農園のみかんは、みかんの木から収穫してすぐ出荷するため、商品が届く頃に「収穫から4~5日後」とされる食べごろをちょうど迎える。ブラッシングやワックス、防腐剤を使わないため、畑から採れたままの本来のみかんを味わえる。
消費者が求める品を自分たちで作る
伊藤さんに農業のやりがいを聞くと「どんなものを作るというのも、“消費者が何を求めているか考えて自分で決める”儲かるよりも何を売ったら喜ぶか、何をしたら役に立つかを第一に考えて商売をしている。」
ただ、バラ色な話ばかりでもない。後継者不足の問題がある。伊藤さんの下を「百姓になりたい」という若者が門をたたくが、農業への憧れだけを抱いて来た若者の中には、途中でやめて去って行く人も少なくない。