こんにゃくを世界に売り込んだ驚異の発想 明治生まれの伝統に革新を加えた職人の気概
石橋屋では、昔ながらの製法と天然の原料でこんにゃく作りを行っている。通常の3倍の量のこんにゃく芋を使い歯ごたえを出した逸品はアメリカではステーキとしても親しまれる。
機械には出来ない
機械化が進む大量生産の中、石橋屋のこんにゃくは熟練の職人が昔ながらの「バタ練り」という製法で作られる。バタ練りとは、こんにゃくを作るとき、こんにゃくのりを四角い鉄の箱に羽根が付いているシンプルな器具に入れ、よく錬る。その際、「バタバタ」と音がなることからバタ練りと呼ばれるようになった。
この手法は非常に手間がかかり、大量生産が困難なため、現在ではバタ練り機を使って製造するこんにゃくメーカーは日本で数社しかない。
石橋屋ではおいしさを追求した結果、このバタ練りを守り続け、また長年のノウハウで独自の製造工程を確立している。今まで職人の経験による感覚のみに頼って来た手法を研究し、練りのスピードや温度などをデータ分析してマニュアル化し若い職人の育成に利用している。
こうして手間ひまかけた製法で出来上がったこんにゃくひとつひとつ茹で上げ、あく抜きをし、作ったこんにゃくは「芸術品」と呼ばれる程である。2012年には優れた技を持つ職人などに贈られる経済産業省主催の「ものづくり日本大賞」を受賞した。
バタ練りで作ったこんにゃくには不均一に気泡ができる。実はこの気泡が美味しさのヒミツ。こんにゃくに空気が多く含まれているほど味が染込みやすい。さらに、この不均一な気泡によって、機械製造ではできない、ザクザクっとして歯ごたえの良い食感が味わえる。
日本は人口が減り続け、特に地方経済の衰退は激しい。だが、日本国内、それも地方にいながらでも、さらには歴史の長い「古い商売」であってもアイデア次第では時代に合わせてビジネスを変容させ、世界を相手にできる。創業130年以上の老舗である石橋屋が示すのは、あらゆるビジネスの本質につながる話である。
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