桑原:フラッシュの技術は、またこれが非常に進んでいて、「これフラッシュだよ」って言ってもわからないぐらいのレベルまで上がってきています。一方、これまで高いと言われていたCGの価格も下がってきている。デジタルが主流になる日は、間違いなく近づいていると感じています。2Dアニメのコストというのは、もうこれ以上絶対下がらないですから。
合理化への葛藤も
アニメ業界っていうのは、情熱を持って入ってきても辞めてしまう人が多いんです。だから辞めないような環境を作りたい。そのためにはどこかを合理化していかなければならない。でも一方で、タツノコプロでは、細かくて難しい画を一枚一枚丁寧に書いていくという、当時としては非常に難しいことにチャレンジして、あれだけの名作を生み出しという歴史もある。それを考えると合理化してしまっていいのかな、やっぱり苦労に苦労を重ねて作るべきじゃないのかな……、という思いもある。ここはたぶんずっと葛藤し続ける部分だと思います。
でもやっぱり制作の環境を良くしていくのは大事なことだと思いますし、それは吉田龍夫さんが作られた創業の精神に反してないのかなと思っています。吉田龍夫さんも、タツノコプロもどんどんどんどん新しい技術にチャレンジしてきている会社ですから、そういう精神をもって新しい制作方法みたいなものにチャレンジしていきたいなと思っています。
塩野:話は変わりますが、北米などは番組販売が厳しいので、なかなか儲からないと聞いています。海外での戦略をどう考えていらっしゃいますか。
桑原:ただ番組を売るだけではダメで、その先の商品化も見据えてビジネスにしていかないといけないでしょうね。
塩野:キャラクターを商品化したおもちゃの需要は大きいでしょうね。東南アジアなどもまだまだ子供がたくさんいますね。
桑原:日本の昔のIP(知的財産権)というのは今でも、海外に出ていっても強いです。インドネシアなんかでは、戦隊ものも非常に人気があると聞いています。
塩野:「クールジャパンでございます」といった感じのものが当たるとは限らない。拍子抜けするようなのが当たったりしますね。
物事が心と心の間で進んでいくのを感じる
塩野:最後にもうひとつ、今回のM&A全体を通じて、印象としてどういうことを感じられましたか。
桑原:M&Aは手続きがすごく複雑で、NHKのドラマ『ハゲタカ』みたいにドライに進んでいくというイメージを、勝手にもっていたんです。でも、やっぱり人と人というか、心と心の間で進むんだなということを強く感じました。ある事業が日本テレビのグループに入るというだけじゃなくて、働いている人たちの気持ちとか、タツノコプロでいうと創業者である吉田龍夫さんの強い思いがあると。
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