タツノコプロ「合理化を推し進めはしない」 桑原社長に聞く老舗アニメの新戦略(下)

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桑原:吉田龍夫さんというのは『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』をやっていた頃の45歳で亡くなっているんですね。着任の前日にお墓参りに行かせていただいたんですが、お墓に享年45歳と書いてあるわけですよ。それを見ると、やっぱりどれだけ無念だったかなと思うんです。その無念を日本テレビグループで引き継ぐ。今回のM&Aはそういうことかなと思ったんです。ビジネスだけではなくて、気持ちも引き継がなきゃいけないと。

唯一無二のタツノコプロの存在

桑原:交渉自体、タカラトミーさんとはちょうど1年間お話しさせていただいたんです。それはやっぱり富山社長以下タカラトミーさんの、みなさんが思うタツノコプロへ対する思いや、一緒に日本テレビグループとビジネスやっていくためにはどうするか、というような思いを一つひとつ、やり取りしていったから時間がかかった。M&Aって事業を金額に換算するだけじゃないんですね。

塩野:タツノコプロの持つIPが代えがたく、唯一無二という部分が大きいですね。

桑原:それもやっぱり、改めて思い知ることが多いですよ。本当に強いなと。海外から非常に条件のよい話がきますし、国内でも、「タツノコプロの社長です」と言ってごあいさつすると、タツノコプロのコンテンツに対して、うわーって1時間ぐらいしゃべり続ける人もいます。

塩野:今、50歳ぐらいの社会の中核にいる人は、タツノコプロのコンテンツが刷り込まれていますからね(笑)。

桑原:日本テレビはやはり映像コンテンツの会社なのでタツノココンテンツの大事さをわかっているし、やっぱり非常にリスペクトしているんですね。この話があった時は、なんとかうまくいけばいいとみんなが思っていました。そして、実際にうまくいって本当に喜んでいます。テレビ屋だからこそ、このコンテンツのすごさがわかるからなんですね。

塩野:なるほど。テレビ局だからこそできるチャレンジに期待しています。今回はありがとうございました。

(撮影:今井康一)

塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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