ドコモ、復活のヒントは「創業期」にあり!

初代社長の「経営哲学」に学ぶ

<インタビュー4>真のエリートは責任を負う

私の哲学はノーブレスオブリージュ(選ばれし者の責務)だ。

大学を出た1957年、電電公社(日本電信電話)はたいへんなエリート主義だった。幹部候補生となるキャリア採用だけでA、B、Cの三つに分かれていた。本社採用となるAは特急券。たった一回の試験の成績で、大きな問題を起こさないかぎり部長まで出世するエリートコースに乗れる。Bは県の通信局採用で急行券、Cは電話局採用でノンキャリアとまったく同じ扱いの鈍行券。

私は運がよかったのか、学校の成績はそれほどよくなかったがAの本社採用。当時、2000人くらいいたキャリア採用の中で本社採用は28人だった。本社採用は入社後2年間、研修であちこちの現場を回る。ケーブルをつないだり、電話交換や電報配達もした。次の1年間は本社の経営管理室で見習いをして、4年目にいきなり電話局の係長になる。

必要なことは嫌われてもやるのが本当のリーダー

2012年3月17日、週刊東洋経済の取材に応じる大星氏(撮影:尾形文繁)

研修では、行く先々で父親くらいの年齢の人に「大星さん、あなたは将来本社の幹部になるのだから、電電公社をいい会社にしてくださいよ」と言われてハッとした。私はたまたまでもA採用として選ばれた以上は「ノーブレス」。だから、現場の人のために尽くすのが自分の「オブリゲーション」だと気づいた。

経営者にとってのノーブレスオブリージュとは、会社で働いている人間を活かす、ヒューマンな経営をやることだ。会社で働いている人間はすべて平等。だからピラミッド型ではなくフラットな組織を作る。学歴などのブランドではなく、能力主義で遇する。給料やボーナスも大事だが、重要な仕事を任せることがもっと大事だ。ドコモでは高卒の人間を常務にした。NTTグループは大騒ぎになったけど、学歴なんて関係ない。私に食ってかかるような人間は仕事に信念がある、と抜擢した。ただ、社長に文句を言うと出世するとうわさになったのは困ったが。

人件費削減のために非正社員を増やす経営なんて、ありえない。同じ仕事をしても正社員の給料の半分なんてのは、ノーブレスオブリージュに反する。そもそも社員にもっと給料を払うべき。それをできるようにするのが経営者の役目。ちゃんと給料を払えばみんなカネを使うのでモノが売れる。モノが売れたら生産が増えて、好循環で景気は回復する。政治なんか当てにしないで、景気回復には経営者が頑張ればいい。

当たり前のことを当たり前にやる。これが案外できない。必要なことは嫌われてもやらなければならない。それが本当のリーダーだ。

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