ドコモ、復活のヒントは「創業期」にあり! 初代社長の「経営哲学」に学ぶ
<インタビュー3> 会社も経営者も独占はダメだ
電電(日本電信電話)公社が民営化してNTTになったとき、経営企画本部長になった。ところが、ここで問題が起こった。
当時、巨大な独占体だったNTTの分割問題が議論されていた。もちろんNTTは分割に大反対。それなのに経営の中枢にいる大星本部長はなんと、「国鉄は民営化して成功したのではない。国鉄は分割したから成功した。地域分割して内部競争体制を作ることで効率化が図られたからだ。巨大な民間会社で独占というのはいちばんダメ。NTTも地域分割して内部競争体制で効率化すべきだ」と言ってしまった。
当然、トップをはじめNTTの幹部からは総スカン。幹部だけじゃないよ。NTT社員、特に分割されると力が弱くなる労働組合からも敵扱い。今でも大星の顔など見たくもないと言う人は多い。
競争がない弊害は経営者にも当てはまる
独占状態で売り上げが何兆円もある企業のバイイングパワーたるや、すごい。いろんなメーカーの人がひれ伏してくれる。そこの人間はデーンと偉そうにしていられるので、非効率が温存されやすい。地域独占の電力会社も同じ構図だ。電力会社を効率化しようと思ったら、送電と発電を切り離して、経営者を全部入れ替える。地域独占ではなく、民間会社として競争させないといけない。
競争がないことによる弊害は経営者にも当てはまる。
自分が社長になって実感したことがある。日本企業の株主はモノを言わないサイレントマジョリティ。人事権は社長が持っているので役員も社長に反対できない。誰からもチェックを受けないものだから、社長は何をやってもいい。社長雑費で毎晩飲み屋に行っても文句を言われない。業績不振が続いてもほとんど責任を追及されない。社長を一度やったらやめられないよ。
大胆にチャレンジすると失敗するリスクがあるので、現状維持を最優先する。じっとして絶対にリスクを冒さない。だから、日本企業はぱっとしない。もちろんチャレンジする社長もいる。でも、数は少ないね。
日本の社長は給料が少ないと言う人もいるけど、1億円以上もらっているのが何人もいる。少なくても年間何千万。それを10年間もらってごらんなさい。決して少なくない。
それに米国の株主は戦う株主だから、経営者はもたもたしているとクビになる。米国の経営者はみんな必死。それに巨額の報酬をもらった経営者が、社会のために寄付をする文化がある。もっとも、米国にもそうじゃない人間もいるけどね。