ガンディーの経済学 倫理の復権を目指して アジット・K・ダースグプタ著/石井一也監訳 ~「第三の経済学」の全貌を鮮やかに描き出す

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 二つ目は、大胆なヒンズー教解釈によって「不可触民」の身分を廃止すること。これによって経済から排除されがちな人々をなくすことができる。

第三に、富者はその財産を、「信託」を受けて労働者のために利用する義務があるという「受託者制度」の主張。つまり基本的には私有財産制を肯定したうえで、富者たちがその経営手腕を発揮して社会全体に奉仕するという制度のデザインだ。

企業家はたとえば、労働者が清潔な労働環境で働き、安価で栄養価の高い食物を食べ、子どもたちに初等教育を与える程度の「生活賃金」を支払う義務がある。企業側がそれを保障しなければ、労働者は非暴力・不服従運動によってストライキをする義務があるという。

貧者を救うべきは、国家ではなく実業家である。その思想は現在、超低価格車「ナノ」で知られるタタ社の社会貢献にも現れていよう。現代の企業倫理を再考するための、確かな指針となる。

Ajit K.Dasgupta
1928年インド・カルカッタに生まれる。カルカッタ大学と英ケンブリッジ大学で経済学を学び、ケンブリッジ大学で博士の学位を取得。加オタワ大学、豪クイーンズランド大学、英オックスフォード大学、インド統計研究所などで教育・研究に携わる。

作品社 2730円 358ページ

  

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