日本人が知らない「幼児教育」が年収に与える影響 生後1000日間の教育が知能発達の鍵を握る

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同時にこの問題は、「子どもの生後数年は、政府ではなく家庭が育児の責任を負うべきだ」というあまねく広まった決めつけによって、政治家の目からちょうど見えなくなっている。

予算の不足もたびたび問題になる。初等教育や中等教育を長年提供してきた人々は、資金の必要性を当然ながら主張する。さらに、幼児期の良質な教育は、健康と栄養──と教育という複数の分野で構成されるため、政府のどの部門が予算や責任をもつべきかがはっきりしないという問題もある。

もう1つぜひ認識しておくべき重要な点は、幼児期の質の悪い教育は、何もしないよりもさらに悪影響をもたらす可能性があることだ。

ケニアで実践された3-6歳児向けのプログラムは学術方面に偏りすぎており、座って試験を受けることを小さな子どもに強要さえした。ペルーでは、小さな子ども向けのプログラムがつくられたものの、スタッフが十分訓練を受けていなかったため、子どもの世話や栄養面はともかく、言語能力や運動能力を発達させるのには失敗した。

少ないコストで平等な機会を与える

3歳以下の子どもに質の高いケアを提供するのは、とてもコストがかかる。小さな子どもを世話するには、1人当たりにより多くのスタッフが必要だからだ。そうした場合には、そして資金が限られている場合には、家庭での育児スキルを支援するほうが費用対効果はよくなるかもしれない。

だが、エチオピアからアメリカまで複数の国では、子どもの生後1000日間は親たちに質の高いプログラムを実行させ、その後、デイケアセンターや3-6歳児向けの就学前プログラムを利用することで、子どもの言語能力や認知能力や運動能力、さらには社会情緒的なスキルも発達し、それが教育の、ひいてはその後の職業の土台をも築くことになったという。

要するに、生後数年の教育への投資は、新しいスキルを学ぶ能力を備えた教養ある労働力を生み出すうえで、最も費用対効果の高い手法の1つなのだ。

それはまた、社会扶助プログラムの助けをできるだけ借りない市民や、犯罪に手を染めず、社会により貢献してくれる──高い収入を得て、納税することもそこには含まれる──市民を生み出す手法とも言える。

そして幼少期の介入のコストは、もしもそれを行わなかった場合にのちに必要となる補習教育や生活保護の支給金に比べれば微々たる金額であるゆえ、不遇な環境に生まれた子どもにも平等な機会を与える最善の方法と言ってよいのだ。

(翻訳:森内薫)

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