インフォシスが若い技術者を惹きつける理由 成長を続けるインドITの成功者

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厳しい選抜過程を経て、すべての従業員は、バンガロールの本社から約80マイル離れたマイソールにある4500人収容の特別訓練施設で、3カ月にわたる集中的訓練を受ける。340エーカーのキャンパスに500人の講師と200の教室を備えたマイソールの訓練センターは、世界最大の企業内大学と見なされている。

従業員のモチベーションを維持するための取り組みも熱心に行っている。主な拠点は、大学のキャンパスのような施設になっている。インドのIT産業は離職率が高いため、インフォシスでは、やる気を持った成長志向の従業員を成長・定着させることに集中的に取り組んでいる。そのため、離職率は低い。同時に、ソフトウエアの専門家にとって夢の職場と見なされ、インドで最も信頼されるブランドにもなった。

平均年齢はわずか26歳

現在、インフォシスは国際事業のためにあらゆる国籍の人材を雇用している。インフォシスの従業員の平均年齢はわずか26歳で、これはマイクロソフトの36歳やグーグルの30歳と比べても注目すべき若さだ。インフォシスでは世界中から64の異なった国籍の従業員がおり、顧客に直接対応する従業員の34%は非インド人だ。

初期段階ではインフォシスは大きな課題に直面した。昼夜問わず困難にぶつかりながらも、自動車もなければ電話もなかった。ムルティ氏は多くのインタビューで、「常に前進し続けるために必要なのはぜいたく品ではなく、革新的な新しいものを作り出そうという情熱である」と述べている。30年が経った現在、ムルティ氏はインドのITのサクセス・ストーリーの父親のような存在になった。

インフォシスは、インドのIT産業の拡大と歩調を合わせ、飛躍的に成長した。ムルティ氏によると、彼は、企業の成長を数字や収益によってではなく、企業が従業員や社会にもたらした幸福で計るという。この独特な企業は、今後も継続的な成長・発展をするポテンシャルを持っているといえるだろう。

帝羽 ニルマラ 純子 インドビジネスアドバイザー

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ていわ にるまら じゅんこ

インド共和国・バンガロール生まれ。法政大学大学院修了。来日以来14年間で、日印コンサルタント会社起業を経て、現在インドビジネスアドバイザーとグローバル人材トレーナーとして活躍。著書には、2013年にインドの諺について日本語で解説した『勇気をくれる、インドのことわざ』がある。インドの諺を日本語で紹介する本の発行は、長い日印の歴史でもこれが初。2014年には『日本人が理解できない混沌(カオス)の国 インド1―玉ねぎの価格で政権安定度がわかる!』 『日本人が理解できない混沌の国インド2―政権交代で9億人の巨大中間層が生まれる』発行。

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