インドで流行るもの、それは「電池式冷蔵庫」 国民に寄り添う製品を開発するゴドレジ財閥

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11月5日、ニューデリーで開かれた世界経済フォーラムに姿を現したアディ・ゴドレジ氏。創業者の甥に当たる(写真:ロイター/アフロ)

インドにおける食品貯蔵の問題は非常に深刻だ。全世帯のうち80%は冷蔵庫が利用できず、食品の実に3分の1が腐敗によって損なわれている。この状況を打開する革新的な製品を展開しているのが、中堅の財閥として知られるゴドレジ・グループだ。

電池式の小型冷蔵庫がヒット

これがチョットクール。この冷蔵庫はJICAからの技術支援をベースにして誕生している(JICAのホームページより)

「チョットクール」(Chotukool、ヒンディー語で少し冷たいという意味)と名づけられたこの製品は、12ボルトのバッテリーで作動し、食品を8~10度に冷やすことのできる45リッター容量のプラスティック製容器。2006年に発売され、農村部の女性などに冷蔵庫代わりに活用されている。コンプレッサーも冷媒も使わず、非常に軽量で持ち運ぶことができるこの製品は、小さな住まいに住み、頻繁に引っ越しをするインドの低所得者層のライフスタイルを徹底的に研究した成果だ。

また価格は65~75ドルと、最も安い冷蔵庫と比べても半額程度だ。タタ・モーターズの低価格車「ナノ」と並ぶ、インド発のBOP(ベース・オブ・ピラミッド)ビジネスの例として、世界のビジネススクールでも知られている。

ゴドレジの家電部門は長年、各種の冷蔵庫と洗濯機を販売しており、この分野では国民的ブランドとなっている。インドの消費者はゴドレジの品質に信頼を寄せており、外国企業の同クラス品に比べて価格が15%程度高くてもゴドレジの製品を購入してきた。このように堅固なビジネス基盤を持ちながら、あえて超低価格で革新的な製品にも挑戦するゴドレジとは、いったいどのような企業だろうか。

ゴドレジの起源はインドがまだ英国の植民地だった1897年にさかのぼる。創業者のアルデシル・ゴドレジ氏は法曹家であると同時に、発明家でもあった。もっとも有名なのは「ゴーディアン・ロック」と呼ばれる、2つの鍵で開け閉めできる錠前だ。

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