京都発「匂いが気にならない餃子」大ヒットの理由 舞妓や芸妓もパクパク食べられて大満足
依頼主が途中下車したわけだから、今井さんも降りることができた。しかし、「オープンまでこぎつけることができる段階にいたため、社員からも『ここまでやったのにもったいない』と。だったら、やってみようかと」。そう小さく笑う。
もちろん、勝算があったからこそ、自らハンドルを握った。先述した通り、“アイデアを考え、売れるを形にする”ことを生業とする今井さんは、依頼主に納得してもらえるよう、緻密に売れるためのロジックを積み立てていったと振り返る。
「依頼主のリクエストは、『過去に料理人を雇って苦労したことがあるため料理人が必要ないような店舗業態を希望する』ということでした。ラーメンや餃子を思いつくも、京都でもラーメンはレッドオーシャン。競合他社の少ない餃子専門店がいいのではないかと提案しました」
となると、どんな餃子で勝負に打って出るか、が問われる。
「われわれは、丸の内などの商業施設の店舗開発もたずさわっているのですが、調べると商業施設には餃子専門店が進出していなかった。そこで、餃子の匂いが気になるから敬遠されているのではないかと仮説を立てました。ニンニクやニラを使わない餃子を開発することができれば、営業途中のビジネスパーソンや女性のお客さまにも匂いを気にせず楽しんでいただけるだろうと」
レシピは「ミシュラン一つ星シェフ」が担当
餃子の開発には、1年半ほど費やしたといい、「依頼主に納得していただけるよう、二の矢、三の矢も用意して考えた」と語る。ミシュラン一つ星を獲得した、旧知の料理長がレシピを考案し、誰が作っても匂いが気にならない美味しい餃子を徹底研究した。まさしく、売れるために設計されたぎょうざだった。
ところが――、依頼主が姿を消してしまう。「こればっかりは計算外」。工程にないイレギュラーな事態を、今井さんは苦笑しながら述懐する。
「だから、6席のカウンターだったんです。味に自信はあったものの、自分たちで経営するとは思いませんでしたから、本当に小さな3坪の店舗から始めようと。われわれはプランニングを本業としているわけですから、もし失敗すれば、口先だけと言われ、企画屋として説得力を失ってしまう。プレッシャーはあった」
手狭がゆえに、餃子のデリバリーも開始する。これが功を奏す。もともと女性客でも楽しめるように開発した餃子は、一口で食べられるように小さめのサイズにしていた。
「芸舞妓さんとは、仕事上いろいろと接点がありました。彼女たちは、お着物(お引きずり)を着てお化粧をしているため、サンドイッチなどパクパクと食べることができるものを好む。私たちの餃子とも相性が良く、ご好評いただいた」
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