ロシアによるウクライナへの侵攻は、中国経済にどのような影響を及ぼすのだろうか。スイス金融大手UBSの中国地区チーフエコノミストを務める汪濤氏は、この問いに対して「(ウクライナ危機は)中国経済の新たな下押し要因になっている」との見解を示した。
3月7日、UBSは北京で開催中の「両会」(訳注:全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)をテーマにしたメディア向けオンライン・フォーラムを開いた。その席で汪氏は、ウクライナ危機をきっかけにエネルギーや食糧などの国際相場が急騰していることを念頭に、次のように指摘した。
「中国の消費者物価指数(CPI)は間違いなく上昇圧力を受けている。最近まで(見かけの)CPI上昇を相殺していた豚肉の値下がりが一巡したため、今後は原材料価格と生産者物価の上昇が徐々に消費者物価に波及するだろう」
とはいえ汪氏は、国際商品価格の上昇が中国の物価にそのまま反映されるとは見ていない。
「例えばエネルギーの国際相場の値上がりは、中国政府の価格統制を通じて国内市場への全面波及が緩和される。また、現在のエネルギー相場の急騰は長続きしない。原因が需要増加や経済過熱ではなく、主に供給側の問題だからだ。したがって(価格変動が大きい食品とエネルギーを除いた)コアインフレ率に与える影響は限られるだろう」(汪氏)
輸出への影響は避けられず
汪氏によれば、中国経済はロシアの侵攻が始まる前から2つの下押し要因に直面していた。1つ目は、新型コロナウイルスの局地的流行が中国各地で反復するなか、地方政府の厳格な防疫措置が個人の消費マインドに与えている負の影響だ。2つ目は、(2021年秋から)中国国内の不動産価格が下降局面に転じ、しかも値下がり圧力が大きいことである。
そこに加わった新たな下押し要因が、ウクライナ危機にほかならない。地政学的リスクの高まりがエネルギーや食糧などの国際相場を押し上げ、特にヨーロッパが直接的かつ深刻な打撃を受けている。このことは、ヨーロッパ向けを中心に中国の輸出への影響が避けられないことを意味する。
そんななか、中国政府は(李克強首相が3月5日に全国人民代表大会で行った)政府活動報告のなかで、2022年の国内総生産(GDP)成長率の目標値を「5.5%前後」に定めた。
この政府目標について汪氏は、「高すぎる数字だ。達成するには、より多くのインフラ建設やその他の景気刺激策が必要になる」と指摘。UBSは中国の2022年のGDP成長率を5.4%と予想しているが、「今やさらなる下方修正圧力にさらされている」と述べた。
(財新記者:范浅蝉)
※原文の配信は3月8日
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