「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない

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日本のマルシュロレーヌが昨年アメリカのブリーダーズカップを勝ったから、レースをご覧になった方も多いと思うが、同国のダート戦はすさまじいサバイバルレースである。

最初から、逃げ馬というのではなく、ほぼすべての馬がガンガン飛ばす。そして、それについていけない馬が1頭ずつ脱落していく。そして、直線もパワーとスピードを持続した馬が大差をつけて勝つ。これがアメリカ競馬だ。

そして、マルシュロレーヌのレースは、すべての馬がバテてしまい、前半ついていけなかったマルシュロレーヌが力を残していて、最後に差し切った、ということなのだ。

1989年のプリークネスステークスのサンデーサイレンス(ディープインパクトの父)とイージーゴアの直線での伝説のマッチレース。これは例外中の例外で、伝説になった。次走のベルモントステークスでは、イージーゴーアが雪辱を果たしたが、このときはサンデーサイレンスに大差をつけていて、ほかの馬はまったく見えないほどのゴールである。

つまり、アメリカダートは短距離だろうがなんだろうが、すべてのレースですべての馬が全力を振り絞るのである。だから、展開による紛れもなく、能力検定レースとしての質が高いのである。その結果、長距離レースがなく、クラシックディスタンスの2400メートルのレースがほとんどなくても、スタミナの検定ができ、かつ、スピードの持続力というスタミナ、パワーも検定できるのである。

日本に欠けているのは、これだ。テーオーケインズが悪いのではもちろんなく、騎手が悪いといっても、彼らは現状に最適対応をしているだけなので、競馬界全体の問題である。短距離化、馬場の高速化、直線の切れが極端に重要になるレース展開、これらを総合的なヴィジョンと構造改革によって解決しないと、真の世界一の競馬市場になることはできない。

金鯱賞はアメリカ並みのタフなレースを期待

さて、最後に13日に中京競馬場で行われる金鯱賞(第11レース、距離2000メートル、G2)の予想だが、これは3強の争い。どこまで強いのか、上がり馬のジャックドール。復活なるか、レイパパレ。休み明けを叩き、得意の左回りに戻って狙い目のサンレイポケット。この3頭に注目だ。

楽しみなレースだが、ジャックドールはガンガン逃げ、レイパパレも2番手に構えてハイペースで先行すると思われ、最初から全力を振り絞るレースになるのを期待したい。

これで勝った馬は本当に強い。馬券は一応、離れた3番人気と思われるサンレイポケットに妙味だが、馬券などという欲望を超えて、すばらしいレースを期待したい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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