ここで筆者はとても残念な知らせを聞くことになる。参加12人のジャーナリストのうち、筆者だけが3回目ワクチン接種日から1週間経っていないとの理由で、EUのデジタル・ワクチンパスがもらえなかったのだ。
ワクチンパスのアプリはインストールできるのだが、デジタルパスに表示される筆者のQRコードをレストラン店員などがスキャナーやリーダーで読み込もうとすると、invalid(無効)との表示が出てしまうのだ。このため、フランス滞在中は、筆者だけフリータイム中に抗原検査を毎日受けるようにフランス外務省担当者から言われた。
ワクチンパスがないことで、筆者はパリに到着してからはほぼ連夜、せっかくのパリ滞在なのにフランス料理店に満足に行くこともできず、マクドナルドなどでのテイクアウトで夕食を済ませていた。自分で言うのも何だが食べ物の恨みは怖い。
世界のワクチン接種状況を追跡するブルームバーグの「ワクチン・トラッカー」の3月10日時点の最新データによると、日本でブースター接種を受けた人の割合は26.9%にとどまる。データの掲載がなかったメキシコを除くOECD加盟国37カ国中、日本はコロンビア、ラトビアに続く下から3番目の35位で最下位層に沈んでいる。とても先進国とは言えない水準だ。
岸田首相は3月3日の会見で、日本のブースター接種が感染高止まりの1つの要因ではないかとある記者から問われ、「そもそも3回目の接種というのは、全世界において、今、取り組みが進められていますが、なかなか接種回数が積み上がらない」と釈明した。しかし、参加12カ国のジャーナリストのうち、筆者のみがブースター接種から1週間を経過していなかった事実を重く受け止めてほしいものだ。ちなみにフランスのブースター接種率はすでに55%に達している。日本の倍以上の割合だ。
日本は水際対策を厳しくし、時間を稼いでいる最中に、ブースター接種をどんどん進めるべきだったと筆者は考えている。筆者のように日本のブースター接種の遅れで、海外での取材や仕事に支障が出ている方もきっと多いだろう。日本は貿易立国なのに、海外で自由に仕事ができなくてどうするのかとの思いが募る。
パリでの抗原検査とPCR検査
翌日の取材のために必ず抗原検査を「毎日」受けるように言われた筆者は、毎晩ホテル近くの薬局に行き、検査を受けた。費用は自前で、どこも20ユーロ(2550円)ほど。緑十字の看板がある薬局ならどこでも検査を受けることができた。
2月24日夜、この日は取材が長引き、午後8時過ぎにホテル近くの薬局に行くと、検査時間はもう終了していると言われた。そして、数キロ離れた24時間営業の別の薬局に行って、検査を受けるように言われた。その薬局に行ってみると、若者を中心に検査待ちの人が大勢いた。検査代は24時間営業のためか、割高で28ユーロだった。
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