「推しのいる人生」が幸せである予防医学的な根拠 推しは人生にウェルビーイングをくれる存在だ

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

能力で人を見る行為は何をもたらすのか

努力をすれば報われる。努力は必ず実を結び、幸せな人生を約束してくれる。かつて私たちはそれが正しいことだと教わってきました。

けれども近年、アメリカを中心に他人を能力でジャッジすることへの批判が出始めています。ハーバード大学のマイケル・サンデル教授も、著書『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(早川書房)で能力主義に疑問を投げかけています。そして有能か無能かというものさしで他者をジャッジする風潮が行きすぎると、社会に分断が生み出されます。同時に、この路線を突き進むほどに、ウェルビーイングが遠ざかっていくことも間違いありません。

『むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く幸せのカタチ』(KADOKAWA) 。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

この説を体現しているユニークな国内企業があります。家電量販店のケーズデンキは、競争激化が続く業界で「がんばらない経営」という方針を打ち出しました。残業なし、ノルマなし、無理をしない。こうした戦略によってどんな変化が起きたのかというと、販売員がのびのびと丁寧に、本音で接客できるようになったのです。

ノルマがないから焦らなくていい。商品のいいところも悪いところもフラットに本音でお客さんに伝えられる。この方針が大当たりしました。丁寧な接客によって高額商品の売上が伸び、コロナ禍にもかかわらず2021年3月期の連結決算は過去最高益を記録します。

ではこのまま右肩上がりを目指すかというと、その方向へは行かない。なぜなら「がんばらない」ことを継続するからだ、と同社は宣言しています。

競争が厳しい時代だからこそ、「あるがままでやっていく」ことを大切にする。苛烈な競争が繰り広げられる外資系企業とケーズデンキであれば、おそらく後者の社員のほうがよりウェルビーイングな人生を送っているのではないでしょうか。

石川 善樹 予防医学研究者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いしかわ よしき / Yoshiki Ishikawa

1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。(株)Campus for H共同創業者。「人がよりよく生きる(Well-being)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。

Twitter:@ishikun3

個人HP:yoshikiishikawa.com

 

この著者の記事一覧はこちら
吉田 尚記 ニッポン放送アナウンサー

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

よしだ ひさのり / Hisanori Yoshida

1975年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。『ミュ~コミ+プラス』(月~木曜日24時より放送中)のパーソナリティとして「第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞」を受賞。「マンガ大賞」発起人および選考委員。著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)が累計13万部(電子書籍を含む)を超えるベストセラーとなり、近著に『没頭力 「なんかつまらない」を解決する技術』(太田出版)がある。マンガ、アニメ、アイドル、落語、デジタルガジェットなど、多彩なジャンルに精通しており、年間100本に及ぶアニメやアイドル、ゲームなどのイベントの司会を務めている。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事