「推しのいる人生」が幸せである予防医学的な根拠 推しは人生にウェルビーイングをくれる存在だ

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能力で人を見る行為は何をもたらすのか

努力をすれば報われる。努力は必ず実を結び、幸せな人生を約束してくれる。かつて私たちはそれが正しいことだと教わってきました。

けれども近年、アメリカを中心に他人を能力でジャッジすることへの批判が出始めています。ハーバード大学のマイケル・サンデル教授も、著書『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(早川書房)で能力主義に疑問を投げかけています。そして有能か無能かというものさしで他者をジャッジする風潮が行きすぎると、社会に分断が生み出されます。同時に、この路線を突き進むほどに、ウェルビーイングが遠ざかっていくことも間違いありません。

『むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く幸せのカタチ』(KADOKAWA) 。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

この説を体現しているユニークな国内企業があります。家電量販店のケーズデンキは、競争激化が続く業界で「がんばらない経営」という方針を打ち出しました。残業なし、ノルマなし、無理をしない。こうした戦略によってどんな変化が起きたのかというと、販売員がのびのびと丁寧に、本音で接客できるようになったのです。

ノルマがないから焦らなくていい。商品のいいところも悪いところもフラットに本音でお客さんに伝えられる。この方針が大当たりしました。丁寧な接客によって高額商品の売上が伸び、コロナ禍にもかかわらず2021年3月期の連結決算は過去最高益を記録します。

ではこのまま右肩上がりを目指すかというと、その方向へは行かない。なぜなら「がんばらない」ことを継続するからだ、と同社は宣言しています。

競争が厳しい時代だからこそ、「あるがままでやっていく」ことを大切にする。苛烈な競争が繰り広げられる外資系企業とケーズデンキであれば、おそらく後者の社員のほうがよりウェルビーイングな人生を送っているのではないでしょうか。

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