暴力団員の子が置かれた「あまりにも過酷な現実」 暴力団の衰退とその家族の闇、わかりにくい弱者

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切り捨てられる「ヤクザの子ども」を救わなくていいのか(写真:rito/PIXTA)
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これまでDV(家庭内暴力)や児童虐待、薬物、貧困といった社会の闇を追い続けてきた作家の石井光太氏は2021年11月、「暴力団員の家庭」をテーマにした異色のルポ作品『ヤクザ・チルドレン』(大洋図書)を発表し、話題となった。
暴力や虐待、薬物が日常化した家庭に暮らし、世間からは「しょせん暴力団員の子ども」と切り捨てられ、排除されていく子どもたちはどうなっていくのか。東京大学大学院准教授で社会学者の開沼博氏と石井氏が、「暴力団員の家庭とその子ども」の裏に隠された「わかりにくい弱者」の問題を語り合った。

開沼 博(以下、開沼):昨年話題となった『ヤクザ・チルドレン』を大変興味深く読みました。暴力団員とその家族をテーマに、暴力団員の家庭にはびこる暴力、虐待、貧困、薬物といった問題、また差別や排除といった一般社会側の問題点が浮き彫りにされています。なぜ今、暴力団員とその家族、とくに子どもの置かれた状況に光を当てようと思ったのでしょうか。

石井 光太(以下、石井):1992年に施行された暴力団対策法(暴対法)にはじまり、2004年以降、全国の都道府県で制定された暴力団排除条例の制定などによって、この30年ほどの間に暴力団のシノギ(経済活動)の手段はどんどん狭められてきました。その成果として、構成員の数は30年前の約10万人から2万5000人程度に激減した。

この間、世間や企業の暴力団を排除する機運も高まり、今では暴力団の構成員は銀行口座も開設できないし、民間企業の保険へ加入することも、自動車ローンを組むことさえ許されません。身分を偽ってこれらをすると詐欺罪で逮捕されてしまうなど、暴力団にとっては非常に厳しい時代になりました。

覚せい剤密売に頼る暴力団員が激増

開沼:ここまで見事に社会の隅々にまで「暴力団員に人権なし」という前提が浸透するとは、かつては想像できなかったところです。当然その中で暴力団員の社会的位置づけは変わったし、暴力団員側の内情も変化したでしょうね。

石井:はい。しかしこうした状況は、経済的に困窮する構成員の割合を増大させ、覚せい剤の密売や窃盗、詐欺、人身売買など、これまで暴力団社会の中でも「下」と見られていた類いの犯罪に彼らの多くを走らせた。そんな末端の暴力団員の家庭には暴力や虐待、ドラッグが当たり前のようにはびこり、子どもたちはその影響をもろに受けて育つことになります。しかし世間は「しょせん暴力団員の子どもなんだから」とほとんど目を向けようとしない。それでいいのかという思いがありました。

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