暴力団員の子が置かれた「あまりにも過酷な現実」 暴力団の衰退とその家族の闇、わかりにくい弱者

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開沼:家庭の中に暴力や虐待、ネグレクトが渦巻いていても、社会福祉に繋がりづらいということですね。行政だって問題がありそうだとなると家庭を訪問したり、「アウトリーチ活動」と呼ばれる状況把握の動きはしたりするわけですが、覚せい剤をやっているような暴力団員の家庭の中に分け入るというのはなかなかハードルが高い。

石井:その結果、子どもたちは劣悪な家庭環境に置かれたままとなり、いつしか少なくない割合の子どもたちが道を外れてしまう。それが大きな問題だと思っています。

開沼:それがさらに差別や排除を生んでいくという悪循環に繋がっていくわけですね。

抜け出せない搾取のピラミッド

石井:暴力団員の子どもたちが道を外れてしまったときに待ち受けているのは、今も残る暴力団特有の「搾取のピラミッド」です。1次団体は2次団体から、親分は子分から、末端の組員は暴走族などの不良少年少女から吸い上げる。そして不良たちは地域の弱い子たちから吸い上げます。腕力にものを言わせて自らも吸い上げる立場になるか、ただ搾取されてボロ雑巾のように捨てられるかのいずれかの道しかない。

そうした過酷なピラミッド構造にひとたび組み込まれてしまったら、そこから抜け出すのは容易なことではありません。社会の側が彼らを異質な存在として排除せず、受け入れていくという寛容さを持たない限り、こうした問題はなくなることはないと思います。

開沼:世間に、暴力団員の子どもたちを被害者や弱者として捉え、そこにある課題を具体的に見て解決していこうという視点がまったく欠けているわけですね。例えば、性産業で働く人の中に、社会的弱者と見て支援すべき人がいるというような視点はここ10年ぐらいでだいぶ根付いてきました。ちょっと前までは「怠惰な人間が堕落してそこにいく」という程度の認識のもと看過されていたわけです。

でも、暴力団員に対してはそういう感覚は広がらないですね。下手をすれば、暴力団員の子だから、不良だから、薬物中毒なのだから、排除するのも当然といった空気さえ感じられます。こうした「見えざる被害者、弱者」をいかに保護し、救うことができるのか。暴力団員の家庭の問題だけにとどまらず、日本社会の大きな問題点だと感じました。

(撮影:根本直樹)
根本 直樹 ライター

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ねもと・なおき  / Naoki Nemoto

1967年生まれ。立教大学文学部仏文科中退。その後『週刊宝石』記者を経てフリーに。主に暴力団や半グレなどアンダーグラウンド分野の取材・執筆活動を続けている。

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