ロシアが払う莫大な戦費「戦争とお金」の深い関係 日本含む過去の戦争を振り返り損得を弾いてみた

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いずれにしても、国家予算から軍事費を賄う場合、当然のことながら「非軍事支出」の部分は削減されることになる。戦時中であればなおのことで、場合によっては国民の年金基金や社会福祉に関する基金、社会インフラの整備資金なども移転され、大幅にカットされることになる。政府が保有する資産なども処分されて軍事費に回されることになる。敗戦が色濃くなればそのスピードは加速される。

前述したように、国家予算だけで軍事費を賄うのはとうてい不可能であり、債券などを発行して特別会計を組むことになる。しかも政府が調達できる限界はGDPの3~4倍であり、それを超えると、仮に戦争に勝ってもインフレなど、国民生活や国家財政に多大な影響を与えてしまう。国家予算の一部を戦費に回すという方法は、極めて限定的といえる。

③ 資金の創出(紙幣の印刷、銀行準備高の増加)

今回のウクライナ侵攻について、プーチン大統領は2日で制圧できると踏んでいたと報道されている。その目論見は大きく崩れ、今後は当初予定していた費用などの追加を考えなければならなくなるはずだ。加えて、ロシアへの経済制裁によって原油や天然ガスを他国へ売って得た資金も入ってこなくなる可能性も出てきた。結局、ロシアができることといえば国内の銀行や民間部門から資金を拠出させ、中央銀行が紙幣を印刷して戦争に必要な物資などを購入することになるかもしれない。

日本も太平洋戦争時には紙幣を印刷しまくった

戦争による資金調達の方法として、常套手段ともいわれるのが、この自国の紙幣を印刷する方法だ。日本も太平洋戦争の時は、紙幣を印刷しまくった。ドイツが第1次世界大戦後に凄まじいハイパーインフレに見舞われたのも、第1次世界大戦の戦争費用の処理や巨額の賠償金の支払いのために、紙幣を無制限に印刷したためだ。ドイツと戦ったアメリカやイギリスも、資金調達の過程で債券発行、紙幣増刷となり、ある程度のインフレは避けられなかった。

要するに戦争の費用を調達するのに、無制限に近い紙幣の増刷をするとハイパーインフレになる、というのが歴史的に見ても常識になっている。日本の太平洋戦争の時にも同様なことが起きている。日本では完全に貨幣価値が変わってしまった。

④ 占領地、敗戦国からの調達

戦争の途中で資金が枯渇してしまったときには、軍隊が占領した土地でさまざまな奪略が起こる。いわゆる現地調達という形になるわけだが、日本はアジア各国で「軍票」の発行等によって戦費を調達したとされる。もともと最初から、兵士の食料品などの補給ルートは想定していなかったとされており、現地調達を想定に戦争に突き進んだと考えられている。

次ページ「賠償金」も戦費の資金調達の1つ
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