ロシアが払う莫大な戦費「戦争とお金」の深い関係 日本含む過去の戦争を振り返り損得を弾いてみた

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戦争の収支決算を考えたときに問題となるのは、戦争によって誰が利益を得るのか、という点だ。いわゆる戦争の収支決算が正確にわからないのは、戦争による収入部分がはっきりしないからだ。実際、戦争によって直接の利益を得る人間がいるとしたら、軍需産業の従業員や株主、武器商人、軍隊に物資を卸す商人、そして政治家ぐらいだろう。

むろん、戦勝国になれば占領した地域のビジネスを独占できるため、自国の企業も長い目で見れば利益を得られる。新しいマーケットを得られるからだ。とりわけ、ロシアのように民間人も含めて街全体、国土全体を破壊すれば、その復興の利権がロシアの企業に割り振られるかもしれない。

戦争の収支決算は大赤字?

しかし、第1次世界大戦や第2次世界大戦といった大規模な戦争では、被害や破壊が多すぎて正確な数字はよくわかっていない。その後の朝鮮半島やベトナムなども、相手が旧共産圏のために、正確な数字はよくわかっていない。

たとえば、雑誌「Fortune」によれば、「ベトナム戦争にアメリカがどれぐらいの費用を費やしたのか、その費用計算をする意思はない」と国防省が公式な見解を出していると報道している。10年も続いたこの戦争は、最終的に議会が納得せず1967年には通常の防衛組織の支出額を上回る分の費用は発表するようになり、その最高額は1968年の230億ドルだったそうだ。動員兵数が53万4700人と最高になった年である、と前出の『戦争の経済学』でも触れられている。

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おそらく今回のロシアによるウクライナ侵攻でも、ウクライナの損害やロシアの収支決算は出てこないはずだ。というのも、このままではロシアの債券等は「投機的」にランク付けされたために、中国などが支援に入らなければデフォルト(債務不履行)に陥る確率が高くなり、最終的にロシア国民はソ連邦崩壊後に経験したハイパーインフレを、もう一度経験することになる可能性があるからだ。

この戦争をアメリカのバイデン大統領は、「専制国家対自由主義国家との戦いだ」と宣言している。憲法によって保障された選挙制度があるにもかかわらず、プーチンを独裁者にしてしまったロシア国民は再びいばらの道を歩くことになるのかもしれない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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