起業家が「資金調達」で直面する2つの大きな壁 個人投資家やVCから出資を受けるためのコツ

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個人投資家へのアプローチとは別に、僕はベンチャーキャピタルにも出資のお願いに出向きました。これはこれで初めての経験。新たな学びも多くありました。

ベンチャーキャピタルは、サービス開始から急角度で売り上げが伸びていくような事業を好みます。その点は、個人投資家よりもさらにシビアです。投資を事業としているわけですから、出資してもらうにはそのための材料を用意しなければなりません。

材料とは何かというと、事業のアップサイド。アップサイドは、事業や企業が狙える売り上げ、利益、成長などの上限のこと。

これから伸びていくベンチャー企業にとっては、今後の業績の伸びしろであり、可能性といえます。これがどれくらい大きいのかを見せないと、ベンチャーキャピタルの「食品流通系は株価が上がりににくく、利益率がイマイチだから……」という壁は越えられません。

投資家は起業家を「点」ではなく「線」で見ている

さて、出資のお願いがどうだったかというと、個人投資家からは何人か出資してくれる人を見つけられましたが、ベンチャーキャピタルは、20〜30社回りましたが、出資は受けられませんでした。

食品流通系であること、アップサイドが見えづらいこと、パンフォーユーよりもリターンが見込める事業がほかにもあるといった壁を乗り越えられなかったのです。

『失敗の9割が新しい経済圏をつくる』(かんき出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ただ、ここで大きな学びもありました。

それは、投資家は起業家を「点」ではなく「線」で見ているということ。いま、このタイミングでは出資しないとしても、半年、1年、2年経ったときに、出資したいと思うようになることがあるのです。

それは言い換えれば、パンフォーユーが成長すれば、その成長の流れを見て、将来的にはベンチャーキャピタルから出資を受けることも可能だということ。

「線を見せよう。出資したいと思われる事業に育てよう」

僕はそう心に決めて、まずは目の前にあって、軌道に乗りつつあるパンフォーユーオフィスを伸ばしていくことに集中することにしました。

おかげさまで、現在も順調に事業を拡大することができています。
「経営は仕事、事業開発は趣味」と言えるほど、僕にとって事業開発は楽しいもの。これから起業・事業拡大を考えている人に、僕の経験がご参考になれば幸いです。

矢野 健太 パンフォーユー代表取締役

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やの けんた / Kenta Yano

株式会社パンフォーユー代表取締役。京都大学経済学部卒業後、株式会社電通に入社するが、地元群馬に貢献したいという思いから退職。教育系ベンチャー企業にて新規事業立ち上げを経て、特定非営利活動法人の事務局長に就任。2017年1月にパンフォーユー設立。創業間もないにもかかわらず、SHARP、ネスレ、KDDI、大阪メトロなど大手企業から引き合いが絶えない。『ガイアの夜明け』『がっちりマンデー!!』『WBS(ワールドビジ ネスサテライト) 』『モーニングサテライト』『スーパーJチャンネル』など名だたる経済・情報番組にも出演。著書に『失敗の9割が新しい経済圏をつくる』(かんき出版)がある。

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