「想定外の需要」こそが事業を広げる本質理由 真の需要は「現場」に出向いてこそ見つかるもの

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一方で、困惑もありました。

僕は個人向けを狙っていましたが、企業に刺さっています。福利厚生というまったく考えていなかったキーワードがフックになっています。

想定していなかった方向に事業が向かい始めたことで、やりたいこと、つくりたい事業のイメージと微妙にズレている気がしたのです。

ここで僕は、あることを決めます。

「流れに任せることにしよう」

視野が広いと自認している人でも、需要を全方位で予想するのは無理です。自分の事業となると、どうしても「ここに需要があるはず」「こういう評価をされるはず」といったバイアスがかかり、視野が狭くなります。

重要なのは、自分が「売れそう」と思っているところで売れない場合があり、想定していない別のところで売れるという現実があるということ。この現実を、バイアスや思い込みがない状態で理解することが大事。

そう考えて、自分がイメージする事業の形はいったん捨てて、反応が良いターゲットに向けたアプローチをしていこうと思ったのです。

想定外の層にウケたり、想定外のターゲットに売れたり、想定外の使われ方をすることによって、ヒット商品になるケースはよくあるものです。

たとえば、ワークマン。現場で働く人向けの作業着を扱っているお店ですが、近年はその機能性の高さが女性やアウトドア好きの若い人たちにウケています。キットカットは、想定外の使われ方で売れている商品。「きっと勝つ」という語呂から、受験生などへのお守りとして売れています。

福利厚生でパンが売れるという事象も、このパターン。消費者が、効果的な売り方を示してくれています。誰にウケるか、なぜウケるのか教えてくれています。その声を素直に聞くことが需要をつかむ近道になるのです。

表面だけ見ても本質的な需要はわからない

需要は、需要を見るだけではわかりません。禅問答のようですが、要するに、「あれが売れている」「これが流行っている」といった現象を表面的に見ても、事業化に結びつくような本質的な需要はわからないということです。

たとえば、タピオカです。タピオカ屋さんが流行っているのを見ると「タピオカミルクティーっておいしいんだろうな」と思います。しかし、需要を捉えるという観点から見ると、そこはあまり重要ではありません。

タピオカミルクティーが売れるのは、タピオカミルクティーがおいしいという理由もあるのでしょうが、それよりも友だちと一緒にタピオカ屋さんに並ぶのが楽しかったり、インスタに写真をあげて、反応が来るのが嬉しかったり、そういったところに理由があります。

事業づくりでは、そこを掘り下げることが大事。需要の表面だけを見てしまうと、タピオカ屋さんを始めてもうまくいかないでしょうし、タピオカブームが終わったら唐揚げ屋さんをやったりバナナジュース屋さんをやったりと、手を替え品を替えしながら需要の表面を後追いすることになってしまいます。

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