「想定外の需要」こそが事業を広げる本質理由 真の需要は「現場」に出向いてこそ見つかるもの

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失敗と思われる事業でも、まったく別の方向に目を向けることで需要を見つけられる可能性があります(写真:adam121 / PIXTA)
新規事業を立ち上げたが、思ったような人気が出なかった。新しい商品を開発したが、思ったように売れなかった――。
そんな失敗と思われる事業でも、まったく別の方向に目を向けることで需要を見つけられる可能性があります。そう話すのは、起業家・矢野健太氏です。本稿では矢野氏の著書『失敗の9割が新しい経済圏をつくる』より、“真の需要の捉え方”について解説します。

偶然から生まれた新しい方向性

僕が最初に立ち上げた個人向けの「オーダーメイドパン」事業は、当初は好調だったものの次第に下火になり、最終的にはサービスを終了することになりました。

残ったのは、工場の冷凍庫に詰め込まれた、売り先のアテがなくなった大量の冷凍パン。僕はとりあえず、このパンを知り合いが勤めている会社に送ることにしました。

すると、「欲しい」「食べたい」「持って帰る」という人が集まり、あっという間になくなったとのこと。無料だから、という理由もありますが、パンでファンを獲得することはできるということが、この出来事によって証明されたのです。これを機に、僕はオフィス向けのパン事業を考えることになったのです。

このように、オフィス向けの案は、偶然から生まれました。「パン好きの女性社員が多いから喜びそう」「冷凍なら常備食になりそう」訪問先の企業からそのような声を聞きながら、どこに需要があるかを探りました。その中で僕が(おっ!)と思ったのは、「福利厚生」という言葉。

ある会社から「福利厚生のひとつとして、社員がおいしいパンを食べられたら良さそう」という声を聞いたのです。福利厚生は会社が費用負担しますので、内容が充実することによって従業員は喜んでくれます。

福利厚生に力を入れている会社はそれほど多いとは言えませんが、当時はちょうど働き方改革という言葉が浸透し始めた頃。社員に喜んでもらう、職場環境を快適にする、楽しく働ける会社にするといった取り組みが進み、福利厚生にも注目が集まりつつありました。

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