女子アナ内定取り消し、労働弁護士の見方

異例の裁判を法律の観点で徹底的に読み解く

一方、内定を受けた学生にとっては、内定通知によって、他の企業への就職活動ができなくなる。内定取り消しは、新卒での就職の可能性が事実上絶たれることになり死活問題である。そのため、内定取り消しをめぐって、しばしば裁判上の紛争にまで発展するケースも多い。

労働者が、企業に採用されるプロセスは大まかにいうと以下の順序のとおりだ。

  1. ①求人・募集
  2. ②応募(履歴書、必要書類の提出など)
  3. ③採用試験、面接等(採用選考)
  4. ④採用内定(内定通知書の交付、誓約書の提出など)
  5. ⑤入社(入社式、辞令の交付など)
  6. ⑥試用期間
  7. ⑦本採用

 

このうち、⑤の入社に至れば、間違いなく労働契約が成立していると言え、企業も労働基準法や労働契約法などに沿って、労働者を簡単に辞めさせることはできない。

「内定」でも、労働契約は成立している

一方、今回のケースで争点の一つとなるのは、④の採用内定の段階でも労働契約が成立するか否かだ。採用内定の方式などは、企業によってさまざま。その判断はケースバイケースにならざるをえないが、一般的には多くの企業で行われていると思われる採用内定は、採用内定通知を出すと、学生に対しては必ずその企業に入社する旨の誓約書を提出させたり、場合によっては入社後に備えた研修などへの参加を義務づけたりしている場合も多い。

そのような場合は、採用内定段階で、学生と企業との間には労働契約が成立していると考えるのが一般的である。

「正式に入社する前なのだから、まだ労働契約は締結されていないので、企業は、自由に内定を取り消すことができるはず」という考えもあるかもしれない。しかし、一般に内定関係に入った場合は、内定者とその会社との間で法的な拘束力が生じると考えられている。

最高裁判所も、ある企業の採用内定に関する判断の中で、採用内定通知によって、労働契約が成立することを認めている(大日本印刷事件・最高裁昭和54年7月20日判決)。

この場合の労働契約は、開始時期が卒業後という始期付きであり、かつ、企業側には一定の場合には解約することができるという解約権が留保されている労働契約(始期付・解約権留保付労働契約)と考えられている。上記のプロセスでいえば、企業に解約権が留保されているという点で、⑥の試用期間と同じような取り扱いを受けることになる。

このように内定といっても、労働契約が成立しているとみられる場合があり、その場合、企業側で内定を取り消すには、正当な理由がなければ認められない。では、内定取り消しが認められる場合とはどういうケースか。

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