サイバー攻撃「ロシア」が本気を出すとどうなるか 今のところ積極的な攻撃は見られないが…

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ロシアの軍事侵攻に対するウクライナの抵抗が長引くほど、そして抵抗が成果を上げるほど、ロシア側が「サイバー部隊の大軍」を動かす誘惑が強まる可能性があると、アメリカ上院情報委員会の委員長マーク・ワーナー(民主党、バージニア州選出)は先週語った。

フェイスブックの親会社メタは27日、ハッカーによるウクライナ軍関係者や著名人のアカウント乗っ取りがあったと発表した。ハッカーは乗っ取ったアカウントを使って「ウクライナ軍が投降する場面」と称する動画を投稿、デマの拡散を試みた。メタはこれらアカウントを凍結し、標的にされたユーザーに注意を促した。

さらにツイッターもハッカーがアカウント乗っ取りを試みた形跡が見つかったと発表。ユーチューブは、デマ拡散作戦の動画を投稿した5つのチャンネルを削除したと明かした。

大規模なランサムウェア攻撃が有力シナリオ

メタ幹部によると、フェイスブックを狙ったのは「ゴーストライター」と呼ばれるハッカー集団。ゴーストライターはベラルーシ政府とつながっていると専門家はにらんでいる。

ゴーストライターは著名人の電子メールアカウントをハッキングし、そこから著名人のソーシャルメディアアカウントに侵入する戦術で知られる。ゴーストライターは過去2カ月間、ウクライナで「激しく活動していた」とセキュリティ企業マンディアントのベン・リードは話す。

アメリカ政府関係者はロシアのサイバー作戦強化がアメリカの直接的な脅威になるとは考えていないが、こうした判断は見直される可能性もある。

西側の対ロシア制裁が想像以上の効果を上げているためだ。前出のワーナーによれば、ロシアの対抗策としては「NATO加盟国に対する直接のサイバー攻撃が考えられるが、それよりも、ロシアのサイバー犯罪者を実質的に総動員してランサムウェア攻撃を大規模に仕掛けてくる可能性のほうが高い」という。後者であれば「ある程度、(政府の)責任を否認できるからだ」。

(執筆:David E. Sanger記者、Julian E. Barnes記者、Kate Conger記者)
(C)2022 The New York Times Company

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