ウクライナ人が語る「ロシアと我々の決定的違い」 お互い言葉も50%くらいしか理解できない

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言葉もウクライナ語とロシア語は、確かに似ていますが、完全にはわかり合えない。ロシア人がウクライナ語を聞いても、理解できるのは50%ぐらいだと思います。

日本からすれば、漢字文化圏のことを考えると、その違いがおおよそ想像できるのではないでしょうか。日本と中国はほぼ同じ漢字を使いますが、意味が違うことがあります。ましてや、漢字文化圏だからといって日本人は中国人を同じ民族だとは思わないでしょう。

――侵攻に際し、プーチン大統領はウクライナを指して「ファシスト」「ネオナチ」という言葉も使って批判しました。

プーチン大統領のずるい言い方です。繰り返しになりますが、ウクライナとロシアは違う。独立したウクライナは、彼にとってはファシストというイメージを植え付けたい対象なのでしょう。

ネオナチと言ったのは、第2次世界大戦から戦後までウクライナの民族解放運動の指導者だったステパーン・バンデラ(1909~1959)のことを念頭に言っているのだと思います。

――バンデラは1941年にドイツ軍で占領されたリヴィウでウクライナ国の独立を宣言するとドイツに逮捕され、ザクセンハウゼンの強制収容所に送られました。解放されてもウクライナに戻れず、ドイツでウクライナ独立運動を行った人物ですね。

一国の英雄は、反対勢力からは犯罪者、反逆者とみなされがちです。「ナショナリスト」という言葉も、相手の受け止め方で意味が変わってきます。プーチンはどうしてもウクライナに敵としてのイメージを植え付けたいからこそ、そんなことを言うのです。

――ウクライナは国際社会において、どのような国の形であるべきだと思いますか。

2014年に親ロシアの大統領だったヤヌコヴィッチ氏がロシアに亡命した後、ウクライナの世論ははっきりとEU(欧州連合)に加盟するという方針で動いています。この動きをさらに推し進め、EU加盟国になってほしいです。2022年3月1日に欧州議会がウクライナの申請を承認したので、この夢は実現されるだろうと思います。

核兵器廃絶とロシアの軍備制限を望む

この戦争が終わった後、強力な軍事力を持つロシアはいつまでも周辺国の邪魔をするでしょう。そのため、ロシアに対してはウクライナのように核兵器を廃絶し、軍備に制限をかけるよう働きかけるべきだと思います。軍隊にも制限をかけるべきだと思います。

Vyacheslav Onyshchenko 1972年、ウクライナ・ドニプロ市生まれ。2002年に日本の国費留学生として来日。東北大学大学院で日本中世文学を学び、博士課程後期3年修了。博士(国際文化)。『将門記』『陸奥話記』『奥州後三年記』『平治物語』『承久記』『曽我物語』『一休ばなし』などを初めてロシア語に翻訳した。『平治物語』の翻訳が日本翻訳家協会特別賞を受賞。胡弓、三味線、箏という日本の伝統楽器を愛し、胡弓では藤植流山室家元、唯一の門人として看板を持つ。

1994年12月にハンガリーの首都ブダペストで署名された「ブダペスト覚書」署名時に戻りたい。ここではウクライナやベラルーシ、カザフスタンが核不拡散条約に加盟して、これら3カ国にOSCE(欧州安保協力機構)が安全保障を提供するとされています。これにアメリカとロシア、イギリスの核保有国も署名しています。今の戦争が終わったら、この覚書で保障国の一員であったロシアにも核兵器の廃絶を迫るべきです。

――ウクライナではすでに民間人で2000人の死亡者が出ています。

武力で侵攻して兵士だけでなく市民さえも殺してしまう。これが21世紀の政治のやり方でしょうか。力ではなく、外交で決めていくのが現代の政治ではないでしょうか。世界はロシアの行動を止めなければならない。やりたい放題させてはいけません。

それには、教訓を残せるような終わり方を模索すべきです。日本からみれば、中国と台湾の問題もあります。なおさら、ロシアの暴挙を止めなければいけないのではないでしょうか。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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