白熱する議論の裏で見えぬTPPの「実体」

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白熱する議論の裏で見えぬTPPの「実体」

つい1カ月前までなじみの薄かった国際協定をめぐり政財界で激論が交わされている。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)。太平洋地域の貿易自由化を目指す、新たな多国間協定である。

「TPPは新たな貿易のルール。日本だけ参加しなければ競争条件で不利になる」(日本経団連)。「関税の撤廃は日本の食料確保にとって大問題。参加には反対だ」(JA全中)。

TPPをめぐって推進派と慎重派の間では、意見が真っ二つに割れている。推進派では経団連と日本商工会議所、経済同友会の経済3団体が早期参加を促す緊急集会を開催。一方、慎重派ではJAが都内で大規模な反対集会を催したほか、民主党議員ら100人超が集まり「TPPを慎重に考える会」を発足。早期参加反対の決議をまとめた。
 TPPは加盟国間で取引されるほぼすべての関税を原則10年間で全廃することを目指す経済的枠組み。原型はシンガポールなど4カ国が2006年に関税を原則撤廃すると定めた経済連携協定「P4」にある。今年3月、そこへ米国や豪州など4カ国が加わり、TPPの政府間交渉が進んでいる。だが日本では、関税撤廃が追い風になると主張する輸出産業に対して、農業団体は安価な輸入農産物の流入により農家が打撃を受けると猛反発している。

実質は日米EPA 韓国追撃の好機か

TPPが注目を浴びたのは、菅直人首相が10月1日、所信表明演説で参加検討を表明したのがきっかけ。政財界入り乱れての議論が続く中、政府は9日にもTPPの基本方針を閣議決定、その後に横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)での意思表明につなげる構えと、話は急速に進んでいる。

日本はこれまで、東南アジアを中心に2国間で関税品目を調整する経済連携協定(EPA)を締結してきたが、農業などへの影響を危惧し、提携国拡大には二の足を踏んできた。今後は韓国や中国、あるいは米国、欧州連合(EU)とのEPA締結が課題とされるが、いずれも交渉にすらつけていない状態だ。一方、韓国はEUと、EPAとほぼ同義の自由貿易協定(FTA)に署名。米国とも合意している。工業製品などの関税が撤廃されると日本メーカーへの打撃は計り知れない。こうした中、今回のTPPに日米ともに参加となれば「実質的に米国とのEPA締結と同じ意味がある」(経産省)ため、日本にとっては挽回のチャンスといえる。


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