「妻、小学生になる」にすっかりハマった人の目線 物語の切実さが俳優たちの本気度と重なり胸を打つ

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だが、物語が進むにつれて貴恵=万理華ではなく、万理華の人格や記憶は別にありながら、なんらかの形で貴恵の人格や記憶で占領されているのではないかとわかってくる。万理華の母・千嘉(吉田羊)は娘が見知らぬ(一応級友の親ということになっている)中年男・圭介と親しげにしていることをいぶかしむ。

原作は村田梛融による人気漫画。絵だったら妻が小学生に生まれ変わった状況に不自然さを感じさせることなく済むだろうが生身の人間が演じることはなかなか難しい。ところが、圭介にとっては妻だが千嘉にとっては娘というちぐはぐな認識で混乱を極めるエピソードも実写ながらナチュラルだ。第6回では圭介が「お母さん」(義母の意味)「お母さん」と連呼して千嘉を辟易させるが、圭介のそのぶしつけさがほほ笑ましさぎりぎりのところを保っていた。

圭介はかなり天然キャラ。だからこそドラマの序盤では他人の娘を妻と認識してつきまとって周囲の人たちからやばい人物と警戒されもする。はたからは圭介の万理華への親しみの込め方は独特の趣味嗜好をもった人物あるいは犯罪を企てている人物のように思える。視聴者的にも序盤は若干、どう鑑賞していいか戸惑ったものだが、あっという間にその躊躇は払拭された。

大人っぽく、小学生にまったく見えない毎田暖乃

なぜ、中年男性と小学生が夫婦役でもお似合いかというと、前述したように毎田暖乃がひれ伏すほどに大人っぽく、小学生にまったく見えないからだ。小学生の役なのに小学生に見えないのもどうかと思うが、黙って立っていれば小学生。でも動く姿は見事に石田ゆり子。石田演じる貴恵の生前の仕草や口調を完コピしている。

逆に、毎田が演じることで石田が演じる貴恵の、さばさばした雰囲気が強調される。石田にはふんわりした雰囲気があるけれど、貴恵はクールで頭の回転がよくて物事の処理にテキパキしている。いささか頼りないところのある圭介の背中を押していくしっかり者の貴恵のキャラクターを毎田がみごとすぎるほど演じている。

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