「妻、小学生になる」にすっかりハマった人の目線 物語の切実さが俳優たちの本気度と重なり胸を打つ

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人気の子役はたいていしっかりした演技をするもので、愛くるしさと健気さを過不足なく発揮する。その演じる技術はそれこそ大人顔負けで、こましゃくれたふうにはならないように徹底されている。毎田の場合、「つましょー」では大人びた演技をしないとならないが、それが嫌味になっていない。子どもが無理して大人っぽく振る舞うのではなく、大人の記憶と体験をもったうえで子どもの肉体を動かしているという、実に難しいところに挑んでいる。背筋をすっと伸ばし、真摯にその課題に打ち込んでいる毎田の姿がじつにすがすがしい。

毎田暖乃がすごい子役として注目されたきっかけは“朝ドラ”こと連続テレビ小説「おちょやん」(2020年度後期)だった。毎田は主人公・千代(杉咲花)の子ども時代を担当し、第1回から登場した。貧しい家で育ち、お風呂に入れず髪の毛にシラミがいるような生活ながら、たくましく日々を過ごしている。酒飲みで働かない父(トータス松本)にも臆することなく強い態度に出るヒロインを鮮烈に演じた毎田。きりっと切れ上がった目尻が印象的で、ただの乱暴者ではなく、物事をすごく深く考えているように見えた。

毎田暖乃の迫真の演技に視聴者はくぎ付け

「おちょやん」での毎田の忘れられない場面は、父が後妻(宮澤エマ)を迎える代わりに千代を奉公に出すとき哀しみを跳ね返し「捨てられたんやない」「うちがあんたらを捨てたんや」とたんかを切る別れの場面。毎田の迫真の表情に視聴者はくぎ付け。毎田暖乃天才伝説のはじまりである。千代の幼少時代は2週間(10回)だったが毎田は確かな爪痕を残した。

また、ドラマ終盤では別の役(後妻の孫で千代の姪で養女になる少女)で登場すると千代の子役のときとはまるで違う行儀のいい人物になっていて、その演じ分けが見事とこれまた注目を浴びた。

視聴者を圧倒した毎田の鮮やかな演じ分けは「つましょー」でさらにアップデートされている。寝ている娘に布団をかける仕草は娘を慈しむ母親そのもので、千嘉と“母親同士”として接するときには逆に千嘉のほうが子どものように見えるほどである。

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