映画「英雄の証明」が突きつける正しさの見極め方 SNS時代だからこそ問われる真実が嘘かの判断力
多額の借金に苦しんでいた囚人がひょんなことから休暇中に拾った17枚の金貨。その金貨があれば人生をやり直すことができる。だが彼はその金貨を懐に入れることなく、持ち主に返した。
そんな”正直者の囚人”がニュースで報じられると、男はまたたく間に英雄として祭り上げられた。だがしばらくして、その美談をめぐる疑惑の声が、SNSからわき起こる。果たして彼は英雄なのか、それとも稀代のペテン師なのか――。
第74回カンヌ国際映画祭で、最高賞・パルムドールに次ぐ栄誉となるグランプリを獲得したイラン・フランス合作映画『英雄の証明』が4月1日よりBunkamura ル・シネマ、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテほかにて全国順次公開となる。『別離』『セールスマン』で、2度のアメリカ・アカデミー賞に輝いた世界的な名匠アスガー・ファルハディ監督が社会に渦巻くゆがんだ正義と不条理を、現代人に突きつけるヒューマン・サスペンスとなる。
拾った金貨を持ち主に返したことで”英雄”に
本作の舞台は数多くの古代遺跡が現存するイラン南西部に位置する古都・シラーズ。元看板職人のラヒムは、別れた妻の兄バーラムからの借金を返せなかった罪で投獄されている。そんなある日、ひょんなことから彼の現在の婚約者が17枚の金貨が入ったバッグを拾い、刑務所の休暇を取得したばかりのラヒムに金貨を譲り渡す。
それは将来を誓い合った恋人たちにとっては、まさしく神からの贈り物のようにも思えた。借金を返済すれば、その日にでも出所できる。ラヒムは金貨を元手に訴訟を取り下げてもらおうと奔走する。だが債権者であるバーラムは、「ラヒムはうそつきだ」「あいつのことは信じられない」と怒り心頭。結局、示談も平行線をたどってしまう。
そんな中、ラヒムはいつしか罪悪感を持ち始め、金貨を落とし主に返すことを決意する。するとその行為が美談としてメディアに報じられる。だが諸事情あって、婚約者のことを秘密にしたいと考えたラヒムは、結果的に、多少事実を隠した形で取材に応じることになってしまった。
だが英雄として称賛されることとなったラヒムのもとには、借金返済のための寄付金が殺到。出所後の就職先もあっせんされることになり、未来への希望に胸をふくらませる。ところがSNSに投稿された“ある噂”をきっかけに状況は一変してしまう――。
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