中野 でも、借金して自社株を買うというのは、いささか不健全ではありませんか。
藤野 ただ、米国の株式市場も同じことをやってきたという歴史はあります。米国内の産業が空洞化してしまい、外国にキャッシュが溜っていくなかで、米国企業は借入を起こして自社株買いを続け、それがROEを引き上げ、今の米国の資本市場を形作っています。だから、日本も数10年遅れで、似たような流れが来ていると考えられます。
不健全ではあるが、全体的には正しい資本主義へ
渋澤 なるほど。
藤野 全般的にいうと、非常に不健全な形で、量でかさ上げされたマーケットがあるのですが、経産省の伊藤レポートによって企業と投資家の望ましい関係構築が提言されたり、東証が高ROE企業を中心に採用するJPX日経インデックス400を算出したり、あるいは金融庁がNISAで長期投資をサポートしていく動きを見せたり、というように、それぞれの動きは一見、バラバラに見えるようでいて、実のところ根底では、正しい資本主義の在り方が模索されています。
こうした動きが持続されれば、日本でこれから資本主義革命が起こるのではないか、とも言えるわけです。2015年の株式市場は、意外と面白いことになるかも知れません。
中野 今の話って、すべて安倍政権になってからですよね。安倍政権の政策に関しては、いろいろ毀誉褒貶ありますけれども、金融改革やコーポレートガバナンスなどに関しては、当たり前のことなのですが、今まで誰も言わなかったことを着実に実行しているという印象を受けます。今の株価上昇も、金融制度の抜本的な改革による賜物ともいえるわけですから、やはりこうした流れが止まらないようにすることが肝心でしょう。
藤野 政治と官僚、民間の一部で、かつての政財官のトライアングルとは違った、新しいトライアングルが出来つつあります。守旧派で、とにかく動かないというトライアングルではなく、今までの流れを一旦壊したうえで、何か新しい動きを出していこうというトライアングルです。
中野 今回の解散騒動に関しても、すごく前向きにとらえれば、目的は体制の立て直しにあると思います。小泉政権の時、郵政解散をしましたよね。あれは、郵政改革がなかなか進まなくなった状況を打開するため、解散というカードを切って、国民の信を問うたわけですよね。
結果的に小泉自民党政権は圧勝して、一気に郵政民営かを推し進めることができました。今回の解散も、これと同じに考えることができます。抵抗勢力によって成長戦略がなかなか進まなくなってきた。だから解散に打って出て、一気に規制改革を進めていく。そういう腹づもりなのでは。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら