中野 にわかに吹いてきた解散風ですから、野党も準備は出来ていないでしょうね。
渋澤 野党は、選挙なんてまだまだ先だと、たかを括っていたのではないでしょうか。孫子の兵法に、相手の不備につけこむといった話がありますが、安倍政権がやろうとしているのは、まさにこれ。しかし、黒田日銀総裁からすれば、解散総選挙の話を聞いて、梯子を外されたと思ったかもしれないですね。
藤野 7~9月のGDPが、相当悪いんだと思いますよ。事前予想では2%程度の成長率と言われていますが、恐らく下方修正するでしょう。
中野 企業業績は相当悪いのですか。
株価は質の悪い上昇をしている
藤野 上方修正している企業もあるのですが、内需を中心に下方修正している企業がたくさんあります。企業だけでなく、個人の行動パターンも、想定していた以上に二極化しています。
今の日本には3つの階層があって、ひとつは絶対貧困層。ここは国の政策として対応していく必要があると思うのですが、その1段階上にはデフレ型の行動を取る人がいます。さらにその上はインフレ型の行動を取る人なのですが、なかでも問題なのはデフレ型の行動を取っている人たちです。
消費税率が引き上げられてから、この人たちの動きが鈍くなってきました。結果、かつてデフレ型の人たちから支持されてきたイオン、しまむら、マクドナルド、ワタミ、ラウンドワンといった企業の業績が、落ち込んでいます。考えてみれば、国内では人件費が高騰している半面、海外から原材料などを輸入している企業になると、どうしても業績は苦しくなってきます。
中野 7~9月のGDPは悪いとして、今(11月上旬)はどうなんですか。
藤野 黒田バズーカ第2弾がさく裂した10月末以降、確かに株価は上昇しました。でも、ちょっと性質の悪い上昇という感がありますね。野田政権が崩れた時というのは、もう本当に谷底には水がないという状態で、そこにアベノミクスが登場し、新しい水をジャブジャブと注ぎ込んだわけです。でも、10月末以降の株価上昇というのは、水は流れてきているけれども、その水には廃油が混じっているというイメージです。
中野 株価が上がっているといっても、買いの主体は外国人投資家のマネーですよね。国内投資家は売り越しが続いていて、特に投資信託の解約が止まらない。国内投資信託全体で見ると、この10日間で数千億円の資金が、解約によって流出しています。これだけ平均株価が上がってくれば、以前なら個人投資家が買いに入ってきたのですが、株価が上がると売りが出てくる。それだけ生活者のマインドが冷えているということだと思います。
藤野 不況下の株高になる可能性がありますね。景気は後退しているけれども、金融緩和によって支えられている株高ですから、生活実感からすると、どうしても違和感がある。
ただ、株式市場を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。特に株式の議決権行使助言会社大手のISS(Institutional Shareholder Services Inc)が、「5年連続でROEが5%を下回る企業の取締役選任議案に反対を推奨する」という方針を打ち出してきました。
このインパクトは非常に大きいと思います。恐らくROEを改善するために、自社株買いを進めてくる企業が増えるのではないでしょうか。ただ、グローバル企業などは海外で稼いでいるから、日本国内にキャッシュがない。そこで借入を行って自社株を買う。この流れが広まれば、日本企業のROEは劇的に改善するはずです。
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