40%超の利益率を誇る関西外国語大学
もっとも、大学は長期的な視点に立って経営を行っている。大幅な赤字で資金繰りが悪化するような事態になれば話は別だが、単年度決算は企業ほどには重要視されない。年間利益を配当という形で株主に還元するといった必要性がないからだ。むしろ、学生に質の高い教育を永続的に提供し、高水準の研究活動を続けていくことができる、安定的な財務力こそ重要になる。
大学経営の安定度を見るために、ここでは帰属収支差額の中期的な動きに注目してみる。帰属収支差額は帰属収入から、人件費や教育研究費など大学の経常的支出(「消費支出」と呼ぶ)を引いたもの。企業でいえば経常利益に相当する。
大学の会計には、キャンパス用地や校舎などの固定資産の取得や、奨学金・研究基金などのために資金を内部留保する「基本金」という仕組みがある。この基本金の積み立て原資となるのが、帰属収支差額だ。
帰属収支が安定的に黒字であれば、基本金組み入れを通して、さまざまな教育研究投資に資金を回すことができる。反面、長期的に経常収支差額が赤字であれば、大学の資産が目減りし続け、やがては経営が危うくなる。
表は、05年度から直近の09年度までの5期について、帰属収支差額比率を算出、その平均額でランキングしたものだ。帰属収支差額比率は帰属収支差額を帰属収入で割ったもので、企業でいえば売上高経常利益率に相当する。
■帰属収支差額比率ランキング(5期平均)
(注)綴じ込み付録「大学四季報」掲載の私立大学について、2005~09年度の帰属収支差額比率の単純平均でランキング
1位の関西外国語大学は、5期とも帰属収支差額比率が40%超。自己資本比率も94・2%と健全財務を誇る。09年度は奨学金拡充に向けて基本金を積み増した。
2位の明海大学も5期間中、最低でも20%強、最高では40%強の帰属収支差額比率を達成している。4位の名古屋商科大学も対象期間5期とも帰属収支差額比率20%以上を達成した。
3位の津田塾大学については、08年度に同窓会組織である財団法人・津田塾会が解散、千駄ヶ谷の土地などを大学に寄付したため、寄付金が前年度0・9億円から186億円に膨張。同年度の帰属収支差額比率も84・5%と急上昇したことが、5期間の平均値を引き上げる結果となっている。
大学にとっては、毎期の帰属収支差額を積み上げた内部資金を投資に振り向け、教育研究の質を向上させていくのが経営の基本だ。特に私立大学の場合、収入に占める学生納付金の割合が高いのが一般的。収入の源泉である学生への還元は、大学の責務でもある。
もちろん、教育の質を高めていくことで学生の高い評価を得ることができれば、学生募集にとっても、大きなプラスになる。それが、学生納付金の維持、増加につながり、さらに財務の安定性も増すという好循環が生まれる。