私立大学財務力ランキング--金融危機の傷が癒え、運用損計上は一巡

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含み損が半減した慶應 青山学院は含み益に転換

財務の安定性、健全性の観点から昨年度に注目を集めたのが、資産運用に伴う損失だ。08年秋のリーマンショックの直撃を受け、08年度決算では一部の大学で巨額の有価証券評価損やデリバティブ運用損が発生、マスコミにも大きく報道され社会的関心が高まった。

その背景には、大学における資産運用の積極化がある。18歳人口が減少し、学生納付金だけに頼っていては経営が先細りになる。大学は収入源の多様化を模索。その一環として、資産運用に乗り出したのだ。厳しい大学の事業環境を考えれば、損失を計上したからといって、資産運用そのものを頭から否定することはできないだろう。

09年度決算で資産運用損失を計上した大学と、期末時点における含み損益の大きい会社は上表のとおりだ。

慶應義塾大学は08年度、約170億円という巨額の有価証券評価損を計上、消費収支差額が07年度の赤字85億円から08年度は269億円の赤字へと急悪化した。さらに08年度末時点で有価証券含み損約329億円、デリバティブ評価損約36億円を抱えていた。それに対して、09年度は有価証券評価損が35億円に急減。含み損も、まだ181億円残っているとはいえ、前期比で半減した。

そのほかの大学を見ても、昨年のような巨額の運用損失を計上する大学は姿を消した。損失額合計で10億円以上は6大学のみ。08年度に154億円のデリバティブ運用損、有価証券評価損65億円を含む合計220億円の運用損失を計上した駒澤大学も、09年度はわずかな損失計上にとどまった。

含み損も前出の慶應義塾大のほか、南山大学が179億円と大きな含み損をまだ抱えているが、両大学を含めておおむね改善傾向にある。青山学院大学や同志社大学などのように、前年度の含み損から含み益へと転換した大学もある。

「リーマンショック後、大学側も資産運用は様子見状態。それ以前のように仕組債などで積極的にリスクを取る動きは見受けられない。国債や社債が中心になっているようだ」と、大学財務に詳しいコンサルタントは語る。


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