「サハリンパイプライン計画」、年明け始動へ 日本、ロシアともに大きなメリット

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ロシアも天然ガスの買い手を拡充することに積極的(ロイター/アフロ)

11月7日午前、衆議院第2議員会館会議室で、日露天然ガスパイプライン推進議員連盟の総会が開かれた。議題は「日露天然ガスパイプライン早期実現に関する政府への要請書」の採択で、会長の河村建夫議員、事務局長の竹本直一議員のほか、10月に訪露したばかりの鳩山邦夫議員も顔を見せた。

日露天然ガスパイプラインとは、サハリンから関東までパイプラインを敷設し、天然ガスを輸送するプロジェクトで、10年以上前からアイデアとしてはあった。ロシア側も乗り気といわれたが、原子力発電比率の拡大を推進していた電力会社の意向や漁業権などの問題をクリアできず頓挫している。しかし、東日本大震災以降、原発の稼働停止が長引き、長期的にもその縮小が避けられない中で、エネルギー資源多様化の一環として見直されている。

今年10月にはロシアの天然ガス事業を一手に引受けるガスプロム社幹部から、日本側にパイプライン構想を打診してきたと伝えられており、日本側の体制も整いつつある。日露ガスパイプライン事業の実現に向けて1998年に設立された日本パイプライン株式会社がとりまとめ役となって、コンソーシアムを組成しているところだ。

年明けに始動、2020年供給開始目指す

想定しているパイプラインは総延長1350㎞で、建設費は6000億円とかさむ。だが、メンバーには国際資源メジャーや著名な国際的投資会社、国内のガスなどエネルギー関連会社、化学、通信、運輸、商社、金融機関などが参画しており、調達に大きな不安はないという。

以前は反対派であった電力各社も、福島第1原発事故後の燃料危機を背景に態度を一変。ガスの量の確保は喫緊の課題だ。「年明けごろには本格的にプロジェクトを始動させ、2020年には供給を開始したい」と、日本パイプライン社長の小川英郎氏は言う。

課題だった漁業権も、今回は問題とならないよう、大半は高速道路の地下などのインフラを活用する方針。サハリン南端のクリリオン岬―稚内間、北海道―本州間の2か所は海底パイプラインとなるが、苫東、むつ小川原の工業地帯を中継基地とすることで回避する計画だ。 

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