三井物産、資源ブーム終焉でも好調の理由 自社株買いをきっかけに株価は1割強の値上がり
三井物産の株価が、にわかに活気づいている。2月28日の終値は1564円。1月末と比べて13%上昇の高値圏で推移している。三菱商事など同業他社と比べても、大きな値上がり幅だ。
きっかけは2月5日に発表した自社株買い。発行済み株式総数2.2%に当たる上限4000万株(500億円分)を市場から買い取り、3月末をメドに消却する。株式の持ち合い解消時に相手から引き取らされたり、単元株の変更に伴う偶発的な自社株買いは過去にもあったが、1株当たり純利益を高めることで株主への利益還元を狙った自社株買いは、同社にとって今回が初めてとなる。
「自社株買い計画発表は、非常に大きなポジティブ・サプライズである」。大和証券の五百籏頭治郞シニアアナリストは発表翌日のリポートでこう評価し、レーティングを引き上げた。UBS証券も今回の発表を機に、三井物産のレーティングをNeutral(中立)からBuy(買い)に見直した。
それにしても、三井物産はなぜ、自己株買いに踏み切ったのか。
確かに、2014年度から適用を予定しているIFRS(国際会計基準)に移行すると、低簿価資産の洗い替えの影響で自己資本がカサ上げされ、ROE(株主資本利益率)が効率的な経営の目安とされる10%を切ってしまう懸念があった、という事情もある。しかし、それ以上に、「本業によるキャッシュの創出が順調で財務基盤が強固であることを、株式市場にアピールする狙いがあった」と、同社の野瀬道広・IR部長は言う。
資源市況悪化でも底堅い業績
資源ブームは終わった――。そう言われたのは一昨年のことだ。天井知らずに上昇してきた資源価格は、中国の景気減速懸念から反落し、総合商社各社は12年度に軒並み、業績の下方修正を余儀なくされた。とりわけ三井物産に与えるダメージは、深刻かつ長期に及ぶと思われていた。同社の連結純利益に占める資源・エネルギー分野の比率は約8割と、競合の総合商社と比べても突出して高いためだ。
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